映画は、発達障害を持つ人々の生活や課題に光を当て、人々の理解を深める強力なツールです。一般的な誤解を解消し、発達障害を持つ人々の日常生活のリアリティを描き出し、視聴者に深い共感と理解が生まれます。ストーリーテリングを通じて、さまざまな発達障害の持つ複雑さと、それに伴う人々の強さと脆弱性を浮き彫りにすることで、社会的認識と周りのサポート体制の構築を促します。
発達障害とはどういう障害?
発達障害は、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスと、その人が過ごす環境や人間関係とのミスマッチから、円滑な社会生活が難しい障害とされています。
脳を含む中枢神経系の機能障害が関係しているとされ、複数の遺伝子の発見や、遺伝的要因と環境要因が相互に影響しあうことが指摘されています。
しかし、「親のしつけが悪い」「愛情不足」などの心因論は医学的に否定されています 。
主に、自閉症スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などが含まれ、それぞれの障害には特有の特性があります。
自閉症スペクトラム症(ASD)
アスペルガー症候群も、ASDの分類です。
対人関係の構築や、コミュニケーションスキルがあまり上手くありません。特定の行動パターンや特定のものを好み、変化に対して敏感です。「〇色じゃないとダメ」「いつもの道がいい」など、自分の考えるこだわりを崩すことが出来ません。
柔軟な対応が求められる場面などでも、どうしていいかわからず、混乱してしまいます。
注意欠如多動性障害(ADHD)
注意力が続かず、ケアレスミスなどが頻繁に起こります。モノの優先順位を決めるのも苦手で、周りと違うことをしてしまい勝ちです。
周囲のペースに合わせられず、自分のペースを乱すようなことは苦手とされています。集中力の維持に課題があると言われています。
学習障害(LD)
「読む」「書く」「計算する」ことに特化した学習領域に苦手意識を抱える特徴があり、言葉の理解や表現には問題がないものの、特定の学習領域で顕著な困難が見られます。適切な教育戦略やツールを使用することで、学習課題を克服できることが多いです。
発達障害が登場する映画なら、レインマンは絶対ハズせない
数ある中の発達障害を扱った有名映画と言えば、ダスティ・ホフマンとトム・クルーズの「レインマン」でしょうか。
ベルリン映画祭グランプリを皮切りに、アカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞ほか、主だった賞を総ナメ、日本でもロングランを記録した感動作です。
自閉症スペクトラム障害の兄と、自由奔放な弟が、さまざまなトラブルに見舞われながら一緒に過ごし、今まで感じたことのない兄と弟の信頼関係が生まれる物語です。
主人公は、サヴァン症候群でもありました。特性がありながら、ある一定の分野で卓越した才能がある人をサヴァン症候群といいます。
日本映画にも名作がたくさん
ADHDに苦しむ女子高生の話『ノルマル17歳。』
“普通”という呪縛に苦しむ女子高生2人組。絃(西川茉莉)は、ADHDの特性のひとつ、忘れ物に悩んでいた。ある日大事なテストの日に目覚まし時計をかけ忘れ寝坊。そのまま、学校へ行かず公園に行くと、派手な見た目の朱里(鈴木心緒)に出会う。
絃は今日の出来事を話し、朱里も自らをADHD だと答えるのだった。。。
うっかり忘れ物することや寝坊なんてよくあるじゃんって思う人は多いかもしれません。
でもそれは、その人の”普通”なだけで、みんなにとっては”普通”ではないのかもしれません。
ADHDの特性によって起こる,、困りごとの数々は”普通”という言葉で片づけていいのでしょうか。本人の努力で全てが解消出来ない事の方が多いのです。
好きな人と分かりあいたいだけ『はざまに生きる、春』
出版社に務める雑誌編集者・小向春(小西桜子)は取材のため、「青い絵しか描かない」ことで有名な画家・屋内透(宮沢氷魚)と出会います。発達障害を持つ屋内は、自分の思ったことをストレートに口にし、感情を隠さず嘘もつけない人でした。人の顔色ばかり見て生きてきた春にとって、そんな彼の姿は新鮮で魅力的に見えます。恋人に怪しまれながらも屋内に惹かれていく春でしたが、相手の気持ちを汲み取ることが苦手な彼に振り回され、思い悩むことになります。
この映画は、人を好きになる事、幸せの定義について問いかけています。主人公は、ASDとADHD両方の特性がある男性。ヒロインには、とても新鮮に見え魅力的に感じます。
より深い関係になると、距離感を持って接していた時とは、また違う感情やすれ違いなど恋愛特有のもどかしい気持ちがヒロインを悩ませます。主人公の特性の「相手の気持ちが汲み取れない」これは、恋愛関係でも大変な障害になるでしょう。男と女の違いからくる価値観の違い、彼の特性への理解の難しさ。将来への不安もどんどん積み重なっていくでしょう。
欠陥を抱えて生きる姉妹の愛の物語『音符と昆布』
小暮もも(市川由衣)は、嗅覚欠陥を抱えながらもフードコーディネーターとして働いていた。父が仕事に行っている時、見たことのない若い女性が家を訪れた。その女性は小暮かりん(池脇千鶴)で、ももの実の姉だった。二人の全くかみ合わない共同生活が始まる。
常識の範囲を超えた行動を見せるかりんに戸惑う妹もも。かりんの感性は、普通の人とは違う、父から「かりんはアスペルガー症候群だ」と明かされたもも。自らも嗅覚障害という欠陥を抱えて生きているももは、かりんにシンパシーを感じ始める。
やることなすことまったくかみ合わない姉妹ですが、かりんの「ワタシのたったひとりの妹ですから」という言葉に全部詰め込まれているような気がします。お互いがお互いのために何かしたいという気持ちで進む物語。とても素敵で心温まる一作です。
母親を毒牙にかけた娘の実話『タリウム少女の毒殺日記』
2005年に起きた、母親毒殺未遂事件をモチーフにした問題作です。
世間を騒がせた「タリウム少女」が綴ったブログには、動物を観察するだけでは飽き足らず、実の母親を観察する記録が存在した。そのブログからは、全てを傍観する「観察者」としての少女の一面が浮かび上がってくるのでした。
事件後、加害少女は「アスペルガー症候群」と診断されました。
大切なはずの母親に毒を盛り、動物と同じように観察対象にし、衰弱していくのをただ観察していく日々にゾッとしてしまいます。
「物語なんて、ないよ。プログラムしかないんだよ。」
このセリフに込められた意味を考えます。
発達障害の叔父の物語「だってしょうがないじゃない」
精神に不調をきたし、発達障害と診断された映画監督坪田義史とその叔父まことさんの三年間。
独居の誠さんの日常を追っていくうちに、「自己決定や意思決定の尊重」「自立問題」「住居問題」などの問題に直面していく。
こちらは、ドキュメンタリー映画になっています。監督自身の体調や精神の異変から、発達障害者の叔父のリアルな生活まですべて網羅していて、さまざまな場面に心が追い付かないこともありましたが、これがリアルに現実に身近に起きている事なんだなと思いました。
社会がしっかり受け止め、特性を抱えた人々により良い生活環境を送って欲しい。ただそれだけです。
まとめ
発達障害の特性を持つ人へのサポートは、その人のニーズを理解することがもっとも大切で円滑な社会生活への道です。
具体的な言葉と肯定的なコミュニケーション、感覚過敏に対する配慮、小さな目標も決めてそれを徐々に達成していく学習サポートなどが含まれます。
また、専門家や家族からのサポートも大切な役割を果たします。
発達障害の早期発見は、個人が社会や職業生活において成功するために重要です。ちょっとした違和感などを見逃さないためには、日頃からの観察が必要で、発達障害と診断された場合は、周りの人の適切なサポートと的確な配慮が求められています。
よくある質問
- Q.発達障害とは何ですか?
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発達障害は、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスにより、社会生活において困難を伴う障害です。自閉症スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などが含まれます。
- Q.発達障害が登場する映画の例は何ですか?
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「レインマン」は発達障害を扱った有名な映画で、サヴァン症候群の兄とその弟の物語です。他にも日本映画では「ノルマル17歳。」「はざまに生きる、春」などがあります。
- Q.発達障害を持つ人へのサポートはどのように行いますか?
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発達障害の特性を理解し、具体的な言葉と肯定的なコミュニケーションを取ることが重要です。感覚過敏に対する配慮や、専門家や家族のサポート、小さな目標を達成していく学習サポートなども必要です。