【結論】発達障害の可能性のある人は約10人に1人|クラスに2〜3人いる計算に
最新の調査によると、発達障害の可能性のある人は約10人に1人いるとされています。
この割合は、学校の1クラスに換算すると、およそ2〜3人の子どもが該当する計算になります。
この数からも分かるように、発達障害は決して珍しいものではなく、多くの人の身近に存在する特性の一つです。
そのため、正しい知識を持ち、理解を深めることが共生社会の実現につながります。
文部科学省の調査から見る小中学生の割合【最新データ】
文部科学省が2022年に公表した調査結果では、公立の小中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち、発達障害の可能性があり特別な教育的支援が必要な子どもの割合は8.8%でした。
これは、2012年の調査から2.3ポイント増加しており、約10年間で推移を見ると一貫して増加傾向にあります。
特に、小学校での割合が高く、子どもたちが集団生活を始める段階で特性が顕在化しやすいことがうかがえます。
また、2020年度の調査では、不登校の小中学生が約19万7千人に上り、その中には発達障害の特性が背景にあるケースも少なくありません。
通級による指導を受けている児童生徒数も年々増加しており、2020年度には約15万7千人に達するなど、支援の必要性が高まっています。
大人の発達障害が占める割合はどれくらいか
大人の発達障害に関する正確な有病率の統計データは限られていますが、一般的に人口の数パーセントを占めると考えられています。
子どもの頃に診断されなかった人が、成人してから社会生活での困難をきっかけに診断を受けるケースが増加しています。
特に、職場での対人関係や業務遂行の課題から、自身の特性に気づくことが多いようです。
年齢を重ねてから診断される背景には、かつては見過ごされがちだった特性が、社会の認知度向上に伴い発見されやすくなったことが挙げられます。
今後、高齢化が進む中で、高齢者の発達障害に関する理解や支援体制の構築も課題となると予測されています。
発達障害の診断における男女差の有無
発達障害の診断には性別による差が見られ、特に自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)では男性の方が女性よりも診断される割合が高いと報告されています。
一般的に、男の子は多動や衝動性といった外在化する行動が目立ちやすく、周囲が気づきやすいため、診断につながりやすい傾向があります。
一方で、女の子は不安や気分の落ち込みといった内面的な形で特性が現れることが多く、問題が見過ごされやすいと指摘されています。
そのため、実際の有病率における男女差は、診断数の差ほど大きくない可能性も考えられます。
実際、診断された子どもの約8割が男の子というデータもありますが、これは表面的な行動の現れ方の違いが影響していると考えられます。
発達障害の割合が増加していると言われる3つの理由

近年、発達障害の割合が増えていると感じる人が多いですが、これは実際に発達障害を持つ人が急増したというよりも、いくつかの社会的な要因が背景にあります。
世界的に見ても、この傾向は共通しており、医療や教育の現場での変化が大きく影響しています。
本当に増えたのか、それとも発見されやすくなったのか、その理由を3つの側面から解説します。
理由1:社会的な認知が広まったため
発達障害の割合が増加している背景の一つに、社会的な認知の広がりが挙げられます。
かつては専門家の間でしか知られていなかった発達障害という概念が、現在ではメディアやインターネットを通じて広く一般に知られるようになりました。
厚生労働省もウェブサイトなどで情報提供を積極的に行っており、多くの人が発達障害の特性について学ぶ機会を得ています。
これにより、保護者や教員が子どもの様子の変化に気づきやすくなったほか、大人自身も「自分の生きづらさは発達障害が原因かもしれない」と考えるきっかけが増えました。
厚生労働省は発達障害者支援センターの整備を進めるなど、相談しやすい環境を整えており、これも診断数の増加につながる一因と考えられます。
理由2:診断の基準や定義が見直されたため
発達障害の割合が増加しているもう一つの理由は、診断基準や定義そのものが変更されたことです。
特に、2013年に改訂されたアメリカ精神医学会の診断基準「DSM-5」の影響は大きいとされています。
この改訂により、以前は「自閉性障害」や「アスペルガー障害」など、複数の下位分類に分かれていたものが「自閉スペクトラム症(ASD)」という一つの連続体(スペクトラム)の概念に統合されました。
この変更によって、従来では診断に至らなかった軽度の特性を持つ人々も、自閉スペクトラム症の診断範囲に含まれるようになりました。
このように、医学的な定義がより広範になったことが、結果として診断を受ける人の数の増加につながっています。
理由3:通級指導をはじめとする支援体制が充実したため
支援体制の充実も、発達障害と診断される人が増えた一因です。
文部科学省は、通常学級に在籍しながら個別の支援を受けられる「通級による指導」を推進しており、利用する児童生徒数は年々増加しています。
こうした公的な支援や、民間の療育機関が増えたことで、保護者が「支援を受けさせたい」と考え、診断を求めるケースが増えました。
診断名がつくことで、子どもは合理的配慮を受けやすくなり、保護者も安心感を得られる側面があります。
以前は「育て方が悪い」などと誤解されがちだった問題が、専門的な支援の対象として認識されるようになったことで、積極的に医療機関を受診する動きが広がったと考えられます。
そもそも発達障害とは?主な3つの種類と特性を解説

発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達の偏りによって、日常生活や社会生活でさまざまな困難が生じる状態の総称です。
その特性の現れ方は多様で、一人ひとり異なります。
発達障害は、主に「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如・多動症(ADHD)」「学習障害/限局性学習症(SLD)」の3つのタイプに分類されますが、これらの特性を複数併せ持つことも少なくありません。
ここでは、主な3つの種類と、それぞれの代表的な特性について解説します。
自閉スペクトラム症(ASD)に見られる特性
自閉スペクトラム症(ASD)は、対人関係や社会的なコミュニケーションの困難、限定された興味やこだわりといった特性を持つ発達障害です。
自閉症やアスペルガー症候群といった、かつての診断名が統合された概念で、特性の現れ方には個人差があります。
具体的な特性としては、「相手の気持ちを察するのが苦手」「場の空気を読むのが難しい」「比喩や皮肉が理解できない」といったコミュニケーションの困難さが挙げられます。
また、特定の手順やルールに強くこだわる、興味の対象が非常に限定的であるといった行動も見られます。
さらに、音や光、特定の触覚などに対して過敏に反応する感覚過敏や、逆に刺激を感じにくい感覚鈍麻を伴うことも多く、日常生活に影響を及ぼす場合があります。
注意欠如・多動症(ADHD)に見られる特性
注意欠如・多動症(ADHD)は、「不注意(集中力がない)」「多動性(じっとしていられない)」「衝動性(思いつくとすぐに行動する)」の3つの特性を主な特徴とする発達障害です。
これらの特性の現れ方は人によって異なり、「不注意」が目立つタイプ、「多動性・衝動性」が目立つタイプ、両方が混在するタイプに分けられます。
不注意の特性としては、忘れ物や紛失が多い、集中力が続かない、話を聞いていないように見える、といった様子が挙げられます。
多動性の特性は、授業中に座っていられない、そわそわと手足を動かすなど、落ち着きのなさとして現れます。
衝動性は、順番を待てない、他の人の会話に割り込んでしまうといった行動につながることがあります。
学習障害/限局性学習症(SLD)に見られる特性
学習障害(LD/SLD)は、全般的な知的発達に遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった特定の能力の習得や使用に著しい困難を示す発達障害です。
知的障害とは異なり、特定の学習領域のみに困難が限局しているのが特徴です。
例えば、「読字障害(ディスレクシア)」では、文字を一つひとつ拾って読んでしまい、文章の意味を理解するのが難しかったり、「書字表出障害(ディスグラフィア)」では、鏡文字を書いたり、形が似た文字を間違えたりします。
また、「算数障害(ディスカリキュリア)」では、数の概念の理解や、繰り上がり・繰り下がりのある計算が苦手といった特性が見られます。
これらの困難は、本人の努力不足が原因ではないため、早期に発見し、特性に応じた学習方法の工夫が必要です。
「自分も当てはまるかも?」と感じたときの公的な相談先

もし、自分自身やお子さんの特性について「発達障害かもしれない」と感じたら、一人で抱え込まずに専門機関に相談することが大切です。
特に、3歳児健診などで指摘を受けた場合や、幼稚園や保育園、学校での集団生活に困難を感じる場合は、早めに相談することで適切な支援につながりやすくなります。
乳幼児期から成人期まで、ライフステージに応じたさまざまな公的な相談窓口が用意されています。
身近な地域で相談できる発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害のある人やその家族からのさまざまな相談に応じる専門機関です。
都道府県や指定都市に設置されており、年齢にかかわらず、本人、家族、関係者など、誰でも無料で相談できます。
相談支援専門員や臨床心理士などの専門スタッフが、日常生活の悩みから、医療、福祉、教育、労働などに関する情報提供、助言まで幅広く対応します。
具体的には、特性の理解を深めるためのペアレントトレーニングの紹介や、福祉サービスの利用援助、関係機関との連絡調整など、一人ひとりの状況に合わせた包括的な支援を行っています。
どこに相談すればよいか分からない場合の最初の窓口としても適しており、地域の支援機関につないでもらうことも可能です。
専門的な診断が可能な医療機関(精神科・心療内科)
発達障害の確定診断を希望する場合は、専門の医療機関を受診する必要があります。
子どもであれば児童精神科や小児神経科、大人の場合は精神科や心療内科が主な診療科となります。
ただし、すべての医療機関で発達障害の診断や診療を行っているわけではないため、事前にウェブサイトで確認したり、電話で問い合わせたりすることをおすすめします。
初診の予約は数ヶ月待ちになることも少なくありません。
受診の際は、子どもの頃の様子が分かる母子手帳や通知表、職場での評価に関する書類など、生育歴や現在の困りごとを具体的に伝えられる資料を持参すると、医師が特性を理解しやすくなり、診断の助けになります。
就労に関する悩みを相談できる支援機関
発達障害の特性により、仕事探しや職場での定着に困難を感じている場合は、就労を専門にサポートする支援機関に相談できます。
代表的な機関として、「地域障害者職業センター」「障害者就業・生活支援センター」「ハローワークの専門援助部門」などがあります。
これらの機関では、職業相談や適職を見つけるための職業評価、就職に向けた準備支援などを無料で受けられます。
また、民間企業が運営する「就労移行支援事業所」では、より実践的な職業訓練や、就職活動のサポート、職場定着支援など、個別のニーズに合わせたきめ細やかなサービスを提供しています。
自分に合った働き方を見つけるために、これらの支援機関を積極的に活用することが有効です。
発達障害の割合に関するよくある質問

ここでは、発達障害の割合に関して、多くの人が抱きやすい疑問について解説します。
診断がつくほどではないものの、発達障害に似た特性を持つ「グレーゾーン」の人の割合や、大人になってから診断される理由、遺伝との関連性など、よくある質問とその回答をまとめました。
発達障害のグレーゾーンにあたる人はどのくらいいますか?
明確な統計はありませんが、診断基準を満たさないものの発達障害に類似した特性を持つ人は相当数いると考えられます。
文部科学省の調査で示された8.8%という数値も、あくまで特別な支援の必要性に着目したものであり、診断名のないグレーゾーンの人はこれ以上に存在すると推測されます。
大人になってから発達障害と診断されるのはなぜですか?
社会的な認知度の向上により、大人の発達障害が知られるようになったためです。
子どもの頃は見過ごされていても、就職後の対人関係や業務上の困難をきっかけに、本人が生きづらさを感じて医療機関を受診し、診断に至るケースが増えています。
発達障害の割合と遺伝には関係がありますか?
発達障害の発症には、遺伝的な要因が複雑に関与していると考えられています。
特定の遺伝子だけで決まるわけではなく、多数の遺伝子とさまざまな環境要因が相互に影響し合って、脳機能の特性として現れるとされます。
親から子へ必ず遺伝するわけではありません。
まとめ

発達障害の可能性がある人は約10人に1人というデータが示すように、これは決して特別なことではなく、私たちの身近な存在です。
割合が増加している背景には、社会的な認知の広がりや診断基準の変更、支援体制の充実といった要因があります。
発達障害は、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD/SLD)などに分類されますが、その特性は一人ひとり異なります。
もし自身や身近な人に当てはまるかもしれないと感じた場合は、発達障害者支援センターや専門の医療機関といった相談先に連絡することが重要です。
正しい知識を持つことで、多様な特性を持つ人々が共生できる社会の実現につながります。



