心療内科では、患者さん一人ひとりの状況に応じて、不安や不眠症、抑うつ状態など、心に関わる様々な症状に対して最適な治療計画を立てます。
治療法には、薬物療法だけでなく、カウンセリングや心理療法、場合によってはリハビリテーションやデイケアプログラムを含むたくさんの方法があります。保険適用についても、患者さんの状態や治療方法によって異なりますが、多くの治療が保険の適用内で行われることが一般的です。
保険適用診療とは
日本の保険診療とは、国民健康保険や健康保険などの公的医療保険に加入している人のすべてが、どの医療機関でも同じ内容の診療を同じ金額で受けられる制度のことです。
公的医療保険における自己負担割合は、年齢や所得によって異なります。
小学校入学前の未就学児は2割
小学校入学後から70歳未満は3割
70歳以上75歳未満は所得に応じて2〜3割
75歳以上は所得に応じて1〜3割
「子ども」は、医療費を免除したり自己負担を一定額にしたり、各市区町村で助成制度があります。
心療内科における保険適用診療では、精神的な不調やストレス由来の症状など、心の健康に関わるさまざまな問題に対する治療が対象となります。
具体的な治療内容には、医師による診察・診断、各検査・心理検査・処方代、薬物療法、心理療法などが含まれ、患者さん一人ひとりの状態に合わせた適切なアプローチが選択されます。
治療の種類や提供されるサービスにはそれぞれ規定があり、全ての治療が保険適用となるわけではありません。これを、患者さんが全額または一部を自己負担する、自費診療といいます。公的保険適用外の治療やサービスを指し、最新の治療法、特別なカウンセリングセッション、オンライン診療、診断書の作成などが含まれる場合があります。
例えば、時間をかけてじっくり行うカウンセリングは、多くの病院やクリニックで自費診療扱いとなります。
また、自立支援医療制度を利用することで、自己負担が1割になる場合や、世帯の所得に応じて負担上限額が設定されることもあります。治療費の詳細や自立支援医療制度の利用については、各医療機関に直接問い合わせしましょう。
心療内科の保険適用時の料金・費用
診察料や処方薬の料金
初診/2,500円~5,000円程度
再診/1,500円~2,500円程度
初診診療と再診診療の場合の保険適用の3割負担で、最低でもこのような費用がかかります。また、夜間や早朝、休日の加算料金や、患者の状態に応じた加算料金が設定されている場合もあります。
診察料の内訳
- 診察料(初診・再診)
- 診療所の体制による加算料
- 通院精神療法
- 検査料(心電図・採血・心理検査など)
- 処方料もしくは処方箋料
- 薬代と調剤技術料
各検査費用
心理検査
簡易な心理検査/250円程度
複雑な心理検査/850円程度
さらに複雑な心理検査/1,350円程度
身体検査
心電図検査/400円程度
血液検査/肝機能や腎機能、甲状腺ホルモンの検査など、検査する項目によって料金が異なります。
精神的なストレスと身体の不調は、身体にさまざまな形で現れる「心身症」として知られています。心と身体は密接に関連しており、一方に問題があると他方にも影響が出ることがあります。その原因を詳しく探るため、検査が必要な場合があります。
各検査には費用がかかり、保険適用と適用外があり、それぞれの料金が設定されています。
処方薬代(お近くの処方箋薬局にて支払います)
2週間分の処方薬/1,000円~2,000円程度
主治医が診察・判断し、患者に処方した処方薬の代金です。治療方法によって異なります。心療内科の初診時は基本的に2週間程度の処方となります。
書類作成の料金
診療情報提供料(1)/750円程度
傷病手当金意見書交付料/300円程度
診療情報提供書(紹介状)
診療情報提供書は、患者本人が希望した場合と、主治医が別の病院で診察が必要であると判断した時に発行します。
他院に転院する際に必要になる紹介状です。患者の病状や既往歴、検査結果などが記載されており、紹介先の診療科や医療機関宛てに伝えるための書類です。
紹介先が決まっていない場合や紹介状を作成してから行く病院を決めたりなど、宛名なしの診療情報提供書は保険診療の対象外です。
診療に基づき、「他の保険医療機関での診療の必要」と認め、診療状況を示す文書と共に、患者の紹介を行った場合に算定できるとされています。なので、宛名なしの診療情報提供書は保険診療の対象外となり、自費で2,500円かかりますのでご注意ください。
紹介状の主な内容
氏名、生年月日、性別、住所など 患者の基本情報
紹介の目的(検査や入院、手術など)
主な症状や疑われる病名
病状や治療経過
投薬内容
アレルギー歴や患者の背景
2022年からは、一般病床数200床以上の「地域医療支援病院」や大学病院などの「特定機能病院」で診察を受ける場合、診察料とは別に、選定療養費として初診時7,000円以上、再診時3,000円以上の特別料金をに支払うことが義務づけられました。また、大規模病院以外でも200床以上の病院については特別料金が発生する場合があるので、紹介状がないと診察してもらえないわけではないですが、紹介状があった方がスムーズで料金も抑えられます。受診前に医療機関に確認しておきましょう。
傷病手当金意見書
傷病手当金意見書は、連続して3日以上欠勤した場合、社会保険被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、社会保険被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
主治医が記入する箇所があり、それは主治医にしか書くことは出来ません。
受診した時などに、受付スタッフや医師本人に書類のことを聞いてみましょう。
傷病手当金意見書は、社会保険のホームページなどでダウンロード出来る場合があります。その際、ホームページ内にある、手当の説明などを読んでみるといいかもしれません。各社会保険によって書式が違いますので、会社の担当部署にご相談ください。
治療費が払えないときは
休職している・したい場合など、収入が減り、治療費用について不安に思う方も大勢いらっしゃいます。安心して治療に取り組める、補助金・給付金についてご紹介します。
傷病手当
1日につき、その人の標準報酬日額の約6割が支給されます。
労務不能と認めた期間は、ご本人と会社で決める期間となるため、病院では決められません。事前に会社の担当部署にご確認ください。
詳しくは、上記で紹介した傷病手当金意見書の項目を参考にしてください。
自立支援医療制度(精神通院医療)
自立支援医療制度には、身体障害の治療をサポートする「更生医療」、発育に必要な医療を提供する「育成医療」、精神障害に該当する場合の「精神通院医療」の3つのカテゴリーに分けられます。
精神通院医療の対象となる疾患には、統合失調症、躁うつ病、うつ病、てんかん、認知症などの脳機能障害や薬物関連障害が含まれ、精神医療を必要とする疾患を持つ人の医療費の自己負担を軽減するために設けられた公的なサポート制度です。
この制度は、所得に応じて医療費の自己負担上限額が設定されます。高額な医療費が発生しても、一定額を超える支払いは不要になる場合があります。
長期通院で長きにわたり高額な医療費がかかる場合には、さらに負担が軽減される措置もあります。
自立支援医療の適用を受けることができるのは、各都道府県や指定都市が認定した指定自立支援医療機関のみです。現在、通院している医療機関が指定されているかどうかは、医療機関や精神保健福祉センターに確認してください。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患を持つ人が申請可能な手帳で、様々なサポートやサービスが受けられるようになります。この手帳は、生活や仕事においてサポートが必要な人に向けて設けられており、障害の程度によって異なる等級が設定されています。
対象疾患は、統合失調症や気分障害、てんかん、中毒精神病など多岐にわたります。これらは、日常生活や社会生活に相当な制限をもたらすもので、適切な支援を受けることが重要です。
この手帳制度は、障害者基本法に基づき整備され、精神障害者を含む様々な障害を持つ方々が対象です。
手帳の有効期限は2年で、更新時には主治医の診断書が必要になります。更新後は、新しい手帳が支給され、旧手帳は返納されます。
手帳を取得すると、障害者雇用促進法に基づく「障害者枠」での就労機会拡大や、所得税・住民税の控除、交通機関の運賃割引、公共施設の入場料割引など、さまざまなメリットがあります。ただし、これらのサービスは自動的に受けられるわけではなく、手帳取得後にそれぞれのサービスへの手続きが必要になります。
都道府県の心身障害者医療費助成制度(重度心身障害者医療費助成制度)
心身に重度の疾患がある人が、保険証を使って病院に受診した場合の自己負担金について助成する制度です。
都道府県や市区町村が実施しているもので、
お住まいの都道府県、市区町村によって対象となる疾患の程度や、助成の内容も異なっています。
- 身体障害者手帳1級
- 2級及び内部障害3級
- 療育手帳A
- 特別児童扶養手当1級受給資格者
上記などが対象となっている場合が多く、市区町村によっては、精神障害者保健福祉手帳所持者なども対象となっている場合があります。
また、受給には所得の制限がある場合が多いです。詳しくは、お住まいの市区町村の障害福祉課などに問い合わせてみましょう。
さいごに
心療内科の治療では、健康保険が適用されることで、経済的負担を軽減しながら必要なサポートが受けられます。しかし、保険適用外の治療もあり得るため、事前に病院に確認することが重要です。
よくある質問
- Q.心療内科の保険適用診療にはどのような治療が含まれますか?
-
診察・診断、各種検査、薬物療法、心理療法などが保険適用されますが、すべての治療が対象ではなく、一部は自費診療となることもあります。
- Q.保険適用外の診療にはどのようなものがありますか?
-
特別なカウンセリングセッション、オンライン診療、診断書の作成などは保険適用外となり、全額または一部を自己負担する必要があります。
- Q.自立支援医療制度を利用することで、どのような経済的なメリットがありますか?
-
自己負担が1割になり、世帯の所得に応じて負担上限額が設定されるため、高額な医療費の支払いを軽減できます。