強迫性障害とは
強迫性障害(OCD)は、理不尽で執拗な恐怖やいらぬ心配をコントロールできない強迫観念や、不安を和らげるために繰り返し行われる行為や精神的儀式の強迫行動が特徴の精神障害です。これらの行動を行わないと何か悪いことが起こると感じ、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。強迫性障害は、不安を感じることで強迫行動に走るという循環に陥りがちです。
発症する年齢
日本で行われた調査によると、男性の平均発症年齢は22歳、女性では24歳となっています。 これまでOCDは、子供には少ない病気と考えられていましたが、現在では、1%~25%程度に、OCDの子供がいると考えられています。
心療内科におけるさまざまなアプローチ
認知行動療法の活用
強迫観念によって感じる不安や恐怖を克服する方法を学ぶ治療法です。特に「露出と反応妨害」(ERP)という技術が用いられます。この方法では、強迫観念を引き起こす状況に意図的に露出しますが、その後の「手を洗う行為」「数を数える行為」などの強迫行動反応を行わないようにサポートします。
これにより、患者は徐々に不安や恐怖が自然に減少することを経験し、日常生活での強迫行動を減らすことができるようになります。
薬物療法
主に抗うつ薬が使用されます。
脳内の特定の化学物質のバランスを調整することで、不安や強迫観念を軽減するのを助けます。一般的に使われるのは、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という種類の薬で、これにより脳内のセロトニンの量が増え、気分が改善されると共に、強迫的な思考や行動が減少します。薬物療法は、患者によっては非常に効果的です。
集団療法とのマッチング
強迫性障害(OCD)を抱える複数の人たちが一緒に治療を受けることを、集団療法と言います。この療法では、参加者が互いの経験を共有し、サポートして助け合います。これにより、参加者は自分だけが問題を抱えているわけではないことを自覚し、他人からのアドバイスや励ましを受けることができます。集団療法は、社会的なサポートや他者との関係を通じて、新しい対処スキルを学ぶ機会を提供するため、とても効果的です。
マインドフルネスとリラクゼーションスキル
マインドフルネス
現在の瞬間に集中し、自分の感情や思考を判断せずに受け入れる練習です。この技術は、不安や強迫観念が生じたときに、それらに振り回されずに現実を冷静に見る助けとなります。マインドフルネスを通じて、患者は自分の感情や考えに対する新しい反応の仕方を学び、不安を軽減することができます。
リラクゼーションスキル
深呼吸や筋肉のリラクゼーションなどがあり、これらは体と心の緊張を和らげるのに役立ちます。これにより、OCDの症状に伴うストレスや不安が減少し、全体的な気持ちの安定につながります。
家族療法
家族療法とは、患者とその家族が一緒に参加する治療法です。
この療法の目的は、家族全員がOCDの性質と影響を理解し、当事者が経験している困難をより良くサポート出来る体制を整えることです。
家族療法では、家族が当事者の強迫行動にどのように接するべきかを学びます。
例えば、強迫行動を無意識のうちに後押ししてしまう家族の良くない行動を修正したり、当事者が自立して対処できるようにサポートする方法を学びます。また、家族間のコミュニケーション問題を改善し、家庭内でのストレスを減らすことも重視されます。
この療法によって、家族が協力して患者の治療に関与することで、患者の症状の管理と改善が促進され、家庭全体の生活の質が向上します。
強迫性障害が及ぼす日常生活への影響
例えば、清潔や整頓に対する過度の恐怖がある場合、何度も手を洗ったり、物を何度も整理したりする必要があると感じるかもしれません。
これにより、日常的な作業や社会生活に時間がかかりすぎたり、他のことが疎かになり、本当にやるべきことに集中することが困難になることがあります。
また、強迫観念や強迫行動に多くの時間を費やしてしまうため、学校や職場でのパフォーマンスの質が低下したり、友人や家族、パートナーとの関係に影響を及ぼすこともあります。これらの行動は、当事者にとっても非常にストレスになりやすく、感情的な苦痛を引き起こすことが多いです。
心療内科に行くには?初診から完治までのプロセス
まず、どのような心理的な問題や症状があるのか自分で考えてみましょう。
日常生活で困っていることは何なのか、不安、悲しみ、ストレス、気分の波など、どういう感情を抱いているのか、生活に支障をきたすレベルは専門家のアドバイスが必要です。
1.診察を受ける医療機関の選定
インターネット検索で「〇〇(お住まいの土地名や最寄駅名) 心療内科 強迫性障害」と打ち込んで検索してみましょう。公式サイトや医院紹介サイトを見て、自分に合いそうな医院を探しましょう。
また、Googleマップで精神科や心療内科を検索して寄せられている患者からのクチコミを見てみると、どんな雰囲気でどんな医師が担当するか人となりが分かるかもしれません。
2.事前に予約しよう
精神科や心療内科は、事前予約必須の医院が大半を占めています。なぜなら、身体の不調の他にも、客観的には分からない精神的な症状が多いので、時間をかけてしっかり診ることが大切です。
3.診察に向けて準備
初診の予約が完了したら、ネット予約ページで予め問診に答えられる場合があるので、リラックスした状態で正直に答えていきましょう。
診察当日のために、聞きたいことや伝えたいことなどメモ書きすると、焦ることなく医師に伝えられます。また、体調不良にならないように努めましょう。
4.初診の診察
日々の生活スタイルや、どんなことで困っているかなど、詳細を医師に伝えましょう。診察スタイルは医師によってさまざまなので、自分に合った医師を見つけることが大切です。
5.診断と治療プログラム
診察の過程で、具体的な症状やその症状がどのように日常生活に影響を与えているか、強迫観念や強迫行動について詳しく聞き取ります。
他の精神的な問題や、身体的な疾患が症状に影響を与えていないかを確認するため、身体検査や血液検査などが行われることがあります。
また、必要に応じて、心理学的なテストやアセスメントを通じて、症状の程度や他の可能性のある精神障害を評価します。
世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD)やアメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル(DSM)など、標準化された診断基準に基づき、症状がOCDの診断基準にマッチするかどうかを、医師が判断します。
診断が確定すれば、適切な治療計画を立てるための基礎となります。治療は通常、薬物療法や認知行動療法など、それぞれの状態に合わせた方法が選ばれます。
6.定期的な通院でフォローアップ
通院に関して、患者の症状の重さや治療の進行状況によって異なります。
一般的には、以下のような3つのガイドラインがありますが、最終的な判断は治療を担当する医師が行います。
治療初期
症状が重い場合や、治療を始めたばかりの時は、週に1回から数回の通院が必要なことが多いです。この期間には、症状の管理と効果的な治療計画のアドバイスに焦点を当てます。
治療中期
症状が安定し始め、治療に慣れてきた段階では、2週間に1回から月に1回の通院になることが一般的です。この期間には、治療の効果をフィードバックし、必要に応じて治療方法の調整を行います。
維持期
症状が大きく改善され、日常生活において問題が少なくなった場合、月に1回またはそれ以上の長い間隔でのフォローアップが推奨されることがあります。この段階では、症状の再発を防ぎ、長期的な管理を目指していきます。
それぞれの状況に応じて、最も適切な通院スケジュールを提案し、時にはより頻繁な通院や追加のサポートプログラムが必要になることもあります。
大切なのは、医師の指示に従い、自分の状態に合わせて柔軟に対応することです。
強迫性障害と上手く付き合っていこう
専門の医師やセラピストに相談し、適切なアドバイスを受け、自分に合った治療法を模索しましょう。自分の症状が出るトリガーやそれに対処する解決法を学び、こころと身体の調子を整えていくことが大切です。
完璧を求める必要はありません。小さな進歩や成功を喜び祝うことで、自分に優しくしてあげましょう。
よくある質問
- Q.強迫性障害の治療にはどのような方法がありますか?
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強迫性障害の治療には、認知行動療法(ERPなど)、薬物療法(SSRIなど)、集団療法、マインドフルネスとリラクゼーションスキル、家族療法があります。
- Q.認知行動療法の具体的なアプローチは何ですか?
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認知行動療法では、強迫観念を引き起こす状況に露出し、その後の強迫行動を行わないようにサポートする「露出と反応妨害(ERP)」技術が用いられます。
- Q.初診から完治までのプロセスはどのように進みますか?
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診察を受ける医療機関の選定、事前予約、診察準備、初診の診察、診断と治療プログラム、定期的な通院でのフォローアップのステップを踏みます。