時間にルーズな人
約束の時間に遅れてくるひとがいます。 何度指摘しても改善されず、連絡すら入れないケースもあります。
一体なぜ、そうした振る舞いをしでかすのでしょうか?
ADHDの特性が影響
近年「大人のADHD」の存在が広く知られるようになりました。
社会人であるにもかかわらず
- 物が片付けられない
- 仕事でミスが目立つ
- 話を聞いていないことが多い
といった行動パターンが見られます。
注意を促しても改善が見られず、周囲も次第にイラつきを募らせる。そうした人の背景には、発達障害の一種であるADHD(注意欠陥多動性障害)がある可能性が指摘されています。
時間通りに行動できない遅刻癖にも、このADHDが関係している場合があるのです。
なぜADHDの人は常にギリギリで行動するのか?
ADHDの原因の一つとして、脳内の神経伝達物質「ノルアドレナリン」の量が少ないことが知られています。(ノルアドレナリンは集中力に関わる物質です) ADHDがない人は、ノルアドレナリンが十分にあるため、自身の意志で集中力をコントロールできます。そのため、気が散っても約束の時間前に行動を開始することができるのです。
一方、ADHDの人はノルアドレナリンが不足しているため、集中力のコントロールが苦手です。周囲の刺激を選別できずに惑わされがちなので、約束の時間が迫ってもなかなか行動に移せません。しかしノルアドレナリンは緊張状態になると増加することがわかっています。
教室で先生が近づくと一瞬気が散る経験はありませんか?それは緊張からノルアドレナリンが活性化し、一時的に集中力が高まったためです。
ADHDの人も同様に、緊張状況下ではノルアドレナリンが出て、行動できるようになります。 例えば、遅刻しそうな時はどうでしょう? ADHDの人は出発時刻が迫るまでダラダラと過ごし、時間に遅れていることにも気づきません。10分前に行動すべきとわかっていてもなかなか行動に移せないのです。 時計を見ると出発時間はすぐそこまで迫っています。しかし他の刺激に気をとられ、体が動きません。
そしてついに遅刻する時間になると、「遅刻した!」と緊張します。ノルアドレナリンが出て一気に準備をはじめます。しかし当然間に合わず、連絡も入れられません。遅刻は確定し、怒られることも確定です。「間に合えばいいや」と過剰に集中してしまい、「連絡する」という選択肢を見落とすことも。
結果、遅刻して「またか」と呆れられます。自分を責め、「遅刻くらいで何を怒るんだ」と開き直る(合理化する)ケースも。ADHDは単なる病気なのに、社会生活や人間関係に大きな支障をきたすのです。
対処法
ADHDの人は、自身の特性に合わせた工夫が必要不可欠です。
- 集合前に仲間と待ち合わせる
- 2時間前からカフェなどで時間を持て余して過ごす
- グループチャットで朝の動向を共有し合う
などの対策があげられます。
加えて、周囲の理解も欠かせません。本人の望み通りにいかないのは気持ちの問題ではなく、ADHDがその特性なのだと認識することで、「注意する」のではなく「どのように手伝えばよいか」と考えるようになるでしょう。
最後に
かつては、遅刻が多い人は単に性格の問題だと見なされがちでした。 しかしADHDという視点で理解が進めば、人生をより快適に過ごせるようになります。
「発達障害」への偏見はいまだ根強い状況ですが、少しずつ理解を深めていくことが、全ての人にとって生きやすい社会につながる第一歩なのではないでしょうか。
参考にしていただけたら幸いです。