皆さまはADHDという病態をご存知でしょうか?
ADHDとは発達障害の一種で、主に注意力の欠如、活動過多、そして衝動性が特徴的な症状となります。こうした症状のために、十分な生活を送ることが困難になる場合があり、治療の必要性が生じます。 ADHDは先天的な発達の偏りによるものですが、幼少期には気づかれずに大人になってから症状に悩まされるケースも少なくありません。それはどのような理由によるのでしょうか。ADHDの症状、検査方法、治療法などについて、詳しく解説していきましょう。
ADHDの症状とは
冒頭で触れた通り、ADHDは注意力の欠如、過活動性、そして衝動制御の困難さといった特徴的な症状を引き起こす病態です。 ADHDは子供に見られる障害だと考えられがちですが、実は成人でも悩まされるケースが少なくありません。 それでは、いつごろからADHDに気づくことができるのか、医療機関を受診するタイミングについてお話しましょう。
ADHDに気づくきっかけは?
ADHDは先天的な発達の偏りから生じる障害ですが、その症状が必ずしも幼少期から顕著に表れるわけではありません。子供のころからADHDの症状はあったものの、軽微だったために見過ごされ、年を重ねるにつれて目立つようになって初めて自覚するケースが増加しています。 なぜ大人になって気づくのか、その理由は年齢や発達段階によって現れる症状が異なるためです。 つまり、子供時代は問題がなくても、成長に伴い新たな症状が表れてくる可能性があるのです。 ADHDの発症原因は完全には解明されていませんが、主な3つの症状である『注意力障害』『過活動性』『衝動性』のうち、以下のような状態が見られれば要注意でしょう。
注意力障害
- 些細なミスが目立つ
- 集中力が継続しない
- 物を無くしたり忘れ物が多い
- 約束や時間を守れない
- 整理整頓が苦手
過活動性
- 優先順位がつけられない
- なかなか落ち着かない
- 好きなことに熱中し過ぎる
衝動性
- 列に割り込むことがある
- 考えなしに発言や行動をする
- 他者の邪魔をしがち
このような状況にあてはまることが多いのであれば、ADHDの可能性を疑ってみる必要があるかもしれません。
医療機関を受診するタイミングは?
日常生活や社会生活において、注意散漫、過剰な活動性、そして衝動性のコントロール困難によって「苦労している」と感じられる場合は、医療機関を受診することをおすすめします。
- 学業成績が伸び悩みを見せている方
- 転職を重ね、なかなか職を継続できない方
- 昇進や配置転換によって業務に付いていけなくなってしまった方
このような事態に陥っている場合は、ADHDの可能性が高いと言えるでしょう。ぜひ一度受診をご検討ください。
ただし、子供の場合は自分で症状に気づくことが難しいため、保護者が子供の様子を注意深く観察することが重要です。ADHDに関する知識を深めた上で、子供の行動を丁寧に見守ることで、ADHDを疑わせる症状があるかどうかを見極めることができるはずです。
ADHDの診断方法
ADHDの診断には、主に知能検査(WAIS-IVなど)と詳細な問診が用いられます。 医療機関では、国際的な診断基準に基づき、知能検査や綿密な問診を実施してADHDの有無を判断します。ただし、一度の検査や受診のみでは確定診断を下すことは難しく、複数回の受診を経て総合的に診断されるケースがほとんどです。
ADHDへの治療アプローチ
ADHDへの治療法には、以下のようなものがあります。
1.薬物療法
- メチルフェニデート
- アトモキセチン
- グアンファシン
2.認知行動療法
- 感情や行動のセルフコントロール能力を養う
- 子供の場合は、適切な行動に対する報酬システムを活用
3.カウンセリング
- 個人カウンセリング
オーダーメイドのアプローチ - 集団療法
同じ悩みを持つ人々との交流と自己理解の促進
薬物療法では、一般的にメチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシンといった薬剤が処方されます。これらは医師が必要と判断した場合にのみ処方され、実際に服用すると「集中力が向上した」「衝動をコントロールできるようになった」といった効果が期待できることがわかっています。
ただし、薬物療法はあくまでADHDの症状を一時的に抑制するためのものであり、根本的な改善は見込めません。しかし、つらい症状を和らげてくれるという意味で大きな恩恵があると言えるでしょう。
一方の認知行動療法は、薬剤に頼ることなく、自らの感情や行動をコントロールできるようになることを目指す治療法です。 子供への認知行動療法では、適切な行動をした際に賞賛やご褒美を与えることで、望ましい行動を促し、自己制御力を身につけさせます。
認知行動療法は、医療機関における個人カウンセリングや集団療法の形で実践されます。個人カウンセリングは、一人ひとりに合わせたきめ細かい対応が可能で、プライバシーを重視する方や寄り添った対応を希望する方に適しています。一方の集団療法は、同じ悩みを抱える仲間と症状を共有し、相互理解を深めながら対処法を学ぶことができます。
治療受けるメリット
ADHDの適切な治療を受けることで、多くの恩恵が期待できます。 それでは、ADHDの治療によってどのようなメリットがあるのか、ご説明しましょう。
集中力の向上で学業成績が伸びる
- 集中力の向上による成績アップ
- ストレスの軽減
ADHDでつらいのは、注意力が持続しないことです。気が散りばらけて集中できず、ストレスがたまりやすくなります。周囲から理解を得られないと、余計に集中力が奪われてしまうことも。 しかし、治療を受けて集中力が持続できるようになれば、勉強に熱心に取り組めるようになり、自ずと成績が上がっていくでしょう。気を散らすこともなく集中できる環境は極めて重要で、注意されることも減少するはずです。
仕事ぶりが良好になり、評価も向上する
- 業務効率の改善
- 長期的な就業の安定
ADHDの治療を経て集中力が付けば、業務の生産性が高まり、能率も上がってくるでしょう。仕事ぶりが良好であれば、上司や同僚からの評価も自然と上がっていきます。ADHDの症状に悩まされることなく、やりがいを持って仕事に専念できるようになり、同一企業に長く勤めることができるようになるはずです。
まとめ
ADHDに悩む方は非常に多いものの、医療機関での受診に踏み切る方はごくわずかです。 もし先に挙げた症状に該当し、日常生活や社会生活において困難を感じている方がおられましたら、一度受診をご検討ください。 適切な治療を受けることで、生活の質が飛躍的に向上する可能性があるのです。