発達障害のある子の高校選びで大切なのは「入れる学校」ではなく「通い続けられる学校」を選ぶこと

発達障害のあるお子さんの高校進学を考えるとき、保護者の方の多くが「高校に進学できるのだろうか」「集団生活についていけるだろうか」と不安を抱えます。
中学校までは義務教育であり、在籍や学びが制度上支えられていますが、高校は受験を経て進学先を選ぶ仕組みであるため、進学の段階で大きな壁を感じやすくなります 。
さらに、高校では学習内容が難しくなり、時間割に沿った行動、提出物の管理、出席状況の維持など、自己管理がより強く求められます。
そのため、発達障害の特性によっては、学力だけではなく、環境への適応や支援体制の有無が学校生活の安定を左右します 。
高校選びで最も大切なのは、「偏差値的に届くか」だけで判断しないことです。
お子さんの特性、学校の理解、支援の受けやすさ、通学のしやすさを総合的に見て、「この学校なら無理なく通い続けられそうか」という視点で進路を考えることが重要です 。
発達障害のある子にとって高校進学が難しくなりやすい理由

義務教育とは支援の仕組みが異なるため
小・中学校では、通常の学級に在籍しながら一部の時間に個別の支援を受ける「通級による指導」が長く制度化されてきました。
文部科学省は、小・中学校等で通級による指導を受ける児童生徒が増加してきたことを示しており、高校でもこうした支援の必要性を踏まえて制度整備を進めてきました 。
一方で、高校段階では小・中学校ほど一律に手厚い支援があるとは限らず、学校によって対応に差があります。
高等学校における通級による指導は制度化されていますが、実施体制や活用のしやすさは学校や地域によって異なるため、進学前の確認が欠かせません 。
そのため、中学までは何とか通えていたお子さんが、高校では環境の変化や支援の受けにくさによって困りごとが表面化することがあります。
特に、曖昧な指示が苦手、感覚過敏がある、予定変更に強い不安を感じる、といった特性がある場合は、学校側の理解がとても重要です 。
単位制や出席要件が負担になりやすいため
高校では学年制であっても、実際には単位の修得や出席状況が進級・卒業に関わります。
文部科学省の資料でも、高校では履修・修得・卒業認定という仕組みの中で学びが管理されていることが示されています 。
発達障害のあるお子さんの中には、疲れやすさ、不安の強さ、睡眠リズムの乱れ、対人緊張などによって欠席や遅刻が増えやすい方もいます。
その場合、「遅れてはいけない」「休んだらもうだめかもしれない」という気持ちが強まり、さらに通学が難しくなる悪循環に入ることがあります。
高校進学はゴールではなく、その後の3年間を安定して過ごすためのスタートです。
受験で入れる学校を選ぶだけでなく、入学後に継続しやすい仕組みがあるかを見極めることが大切です 。
※参考:高等学校における「通級による指導」について/発達障害者支援施策 |厚生労働省
【表で比較】発達障害のある子が検討しやすい高校進学先

発達障害のあるお子さんの進学先は一つではありません。
全日制だけでなく、定時制や通信制など、それぞれに異なる特徴があります 。
| 進学先 | 主な特徴 | 向いているケース | 確認したい点 |
|---|---|---|---|
| 全日制高校 | 毎日通学し、集団授業が中心 | 生活リズムが安定しやすく、集団生活への適応が比較的しやすい場合 | 支援の具体性、欠席時のフォロー、相談体制 |
| 定時制高校 | 比較的少人数で、時間帯や学び方に柔軟性がある場合がある | 朝の通学負担が大きい、不登校経験がある場合 | 卒業までの年数、学習支援、進路指導 |
| 通信制高校 | 自宅学習や少ない登校日数を中心に卒業を目指す | 対人負担が大きい、自分のペースを保ちたい場合 | レポート支援、面談体制、通学コースの有無 |
全日制高校
全日制高校は、いわゆる一般的な高校生活を送りやすく、生活リズムを整えやすいことが利点です。
その一方で、毎日の登校、集団での一斉指示、時間割に沿った行動などが求められるため、環境変化や集団場面が苦手なお子さんには負担になることがあります。
学校によっては、特別支援教育コーディネーターや教育相談体制が機能しているところもあります。
学校見学では、「困ったときに誰がどのように支援してくれるのか」を具体的に確認することが大切です 。
定時制高校
定時制高校は、少人数で落ち着いた雰囲気の中で学べる学校もあり、不登校経験のあるお子さんや、朝の通学が難しいお子さんに合うことがあります。
文部科学省の制度上も、高校段階の支援は全日制・定時制・通信制の各課程を対象に考えられています 。
一方で、学校数が限られる地域もあり、通学距離や卒業までの見通しを確認することが必要です。
また、「自分のペースで学べる」という印象だけで選ぶのではなく、相談しやすい雰囲気があるかも大切な判断材料になります。
通信制高校
通信制高校は、登校日数を抑えながら卒業を目指しやすく、環境刺激を減らしたいお子さんに向いている場合があります。
近年は、通学コースや個別サポートを組み合わせた形態もあり、選択肢が広がっています 。
ただし、通信制は「楽な進路」という意味ではありません。
レポート提出や学習の自己管理が必要になるため、学校側の支援の厚さや保護者・支援機関との連携のしやすさを確認することが重要です 。
理解ある高校を見つけるための3つのポイント

ポイント① 合理的配慮を具体的に相談できるか
合理的配慮とは、障害のある人が不利益を受けないよう、過重な負担にならない範囲で行われる必要な調整のことです。
文部科学省は、学校教育分野において障害を理由とする差別の解消と合理的配慮の提供について示しています 。
高校見学や個別相談では、「配慮していますか」と抽象的に聞くよりも、具体的な場面で確認するのが有効です。
たとえば、板書の書き写しが難しい場合の資料配布、口頭指示が理解しにくい場合の書面化、感覚過敏がある場合の座席配慮などを質問すると、学校の実際の対応力が見えやすくなります 。
ポイント② 柔軟な通学・学習の仕組みがあるか
発達障害のあるお子さんにとって、毎日同じペースで通学し続けることが難しい時期は珍しくありません。
そのため、欠席時のフォロー、補習、課題提出の方法、相談のしやすさなど、柔軟な仕組みがある学校のほうが継続しやすい傾向があります。
「原則としてこうです」で終わる学校よりも、「状況に応じて相談しながら調整します」と答えられる学校のほうが、実際の困りごとに向き合ってくれる可能性があります。
パンフレットだけではわからないため、個別相談の場で確認することが大切です。
ポイント③ 学習支援と心理支援の両方があるか
高校生活の困りごとは、学習面だけではありません。
人間関係、自己評価の低下、不安や抑うつ、進路への焦りなど、心の負担が学習に影響することもあります。
文部科学省は教育相談体制の充実を進めており、スクールカウンセラーは児童生徒へのカウンセリングや、教職員・保護者への助言を担う心の専門家とされています 。
したがって、学習支援だけでなく、相談先が複数あるか、定期的な面談があるか、外部機関と連携できるかも重要な確認項目です 。
発達障害のある子の高校受験で知っておきたいこと
内申点だけで進路をあきらめない
中学時代の欠席や不登校によって内申点が低くなり、受験そのものを悲観してしまうご家庭は少なくありません。
しかし、高校入試は地域や学校によって評価の比重が異なり、学力検査、面接、作文、調査書などの組み合わせもさまざまです。
そのため、内申点だけで「もう無理」と決めつけるのではなく、個別相談で現実的な受験方法を確認することが大切です。
全日制だけでなく、定時制や通信制も含めて考えることで、お子さんに合った進路が見つかることがあります。
受験時には合理的配慮を申請できる場合がある
高校入試では、公平性を前提としながら、発達障害のある受験生に必要な配慮が行われ、配慮を受けることによって不利益を受けないようにする考え方が示されています 。
配慮の例としては、別室受験、座席位置の調整、試験時間の延長、指示の書面化などがあります。
どのような配慮が可能かは自治体や学校によって異なるため、早めに中学校や志望校へ相談し、必要に応じて診断書や意見書の準備を進めることが大切です 。
障害名よりも「困りごと」と「必要な配慮」を伝える視点が大切
願書や面接で障害について伝えるべきかは、一律に答えが決まるものではありません。
ただし、入学後の支援につなげるためには、診断名そのものよりも、「どんな場面で困りやすいか」「どんな対応があると実力を発揮しやすいか」を具体的に共有することが役立ちます 。
お子さん本人の気持ちも尊重しながら、中学校の先生、必要に応じて主治医や支援者と相談し、無理のない伝え方を検討するとよいでしょう。
受験は合格がゴールではなく、その後の学校生活まで見据えて考えることが重要です。
入学後の支援と卒業後の進路も見据えて高校を選ぶ
入学後に利用できる支援として、学校内の教育相談、スクールカウンセラー、外部の医療機関や支援機関との連携があります 。
厚生労働省は、発達障害情報・支援センターを通じて、発達障害に関する情報発信や地域支援体制づくりを進めており、家庭・教育・福祉の連携も重視しています 。
また、卒業後の進路を考えるうえでは、進学だけでなく就労支援の視点も重要です。
厚生労働省は、発達障害のある方に対する就労支援として、ハローワークの専門支援やジョブコーチ支援、障害者就業・生活支援センターなどを案内しています 。
高校選びの段階から、卒業後にどのような進路支援があるかを見ておくと安心です。
進学実績の数字だけでなく、「将来に向けてどのような相談ができるか」まで確認しておくと、より現実的な進路選択につながります。
まとめ

発達障害のあるお子さんの高校選びでは、学校名や偏差値だけでなく、支援の具体性、通学のしやすさ、相談体制、卒業後まで見据えた支援を総合的に見ることが大切です。
高校段階では、通級による指導や合理的配慮の制度も整えられてきていますが、実際の運用には学校差があるため、見学や個別相談で丁寧に確認することが欠かせません 。
「どこなら入れるか」ではなく、「どこなら安心して通い続けられるか」という視点で学校を選ぶことが、お子さんの高校生活とその先の進路を安定させる第一歩になります 。
参考文献・出典
- 文部科学省「特別支援教育の推進について」
- 文部科学省「高等学校における通級による指導」
- 厚生労働省「発達障害者支援施策」
- DSM-5-TR(精神疾患の診断・統計マニュアル)
- 日本児童青年精神医学会 ガイドライン
- 国立特別支援教育総合研究所(NISE)資料



