赤ちゃんのハイハイの仕方で発達障害はわかる?
赤ちゃんのハイハイの仕方が他の子と違うと、「発達障害ではないか」と不安になる保護者の方は少なくありません。
実際に、シャフリング(いざりばい)や高ばい、ズリバイが長いといった移動の仕方は、インターネットでもたびたび話題になります。
しかし、結論からいうと、ハイハイの仕方だけで発達障害の有無を判断することはできません。
ハイハイは個人差が大きく、そもそも近年の発達評価では「何か月までに必ずハイハイするべき」という単純な見方はされていません。
重要なのは、ハイハイの形だけを見るのではなく、赤ちゃんの全体的な発達、たとえば視線の合わせ方、名前を呼んだときの反応、身ぶり、座り方、つかまり立ちなどを総合的に確認することです。
気になる赤ちゃんのハイハイの仕方
赤ちゃんの移動の仕方には幅があり、四つん這いの一般的なハイハイ以外も珍しくありません。
以下のような動きは、単独では異常といえない一方で、続き方や他の症状によっては相談のきっかけになります。
シャフリング(いざりばい)
シャフリングとは、座った姿勢のままお尻をずらして進む移動方法です。
手をあまりつかずに進む赤ちゃんもいれば、片手を補助的に使う赤ちゃんもいます。
この動きは、ハイハイを経ずに移動を覚える赤ちゃんにみられることがあり、それ自体で病気や障害を意味するわけではありません。
ただし、移動方法が長く固定される、左右差が強い、立つ・座るなど他の運動発達も遅れている場合には、運動発達全体を確認したほうが安心です。
高ばい(クマ歩き)
高ばいは、膝を床につけず、手のひらと足の裏で体を支えて進む動きです。
見た目が特徴的なため心配されやすいのですが、筋力がついてきた過程でみられることもあります。
一方で、床に膝や手をつく感覚を嫌がっている場合には、感覚の過敏さが背景にあることも考えられます。
ただし、高ばいだけで発達障害を疑うことはできず、触られることを強く嫌がる、特定の感触を極端に避けるなど、感覚面の特徴が他にもあるかをあわせてみることが大切です。
片足ハイハイ・左右非対称の動き
片方の膝をついて、もう片方の足を立てるように進むなど、左右で動きが違うハイハイをする赤ちゃんもいます。
これは一時的な癖であることもありますが、左右差が強く続く場合は注意が必要です。
特に、片側ばかり使う、片方の手足を引きずる、体が極端に硬いあるいは柔らかいといった様子がある場合には、小児科で相談するのがよいでしょう。
ズリバイからなかなか進まない
ズリバイは、お腹を床につけたまま前に進む動きで、多くの赤ちゃんが経験します。
ズリバイが長く続くと心配になりますが、体幹の筋力、うつ伏せ姿勢への慣れ、移動への意欲などによって進み方は変わります。
CDCも、9か月頃の発達支援として「少し離れた場所におもちゃを置き、ハイハイ・ずりばい・寝返りで取りに行けるよう促す」ことを紹介しており、移動の仕方そのものより、周囲への関心や動こうとする力をみる視点が重要です。
ハイハイしない・遅いのは発達障害が原因?

「10か月を過ぎてもハイハイしない」「ハイハイせずにつかまり立ちをした」といったケースでも、直ちに発達障害を意味するわけではありません。
近年は、ハイハイは個人差が大きく、すべての赤ちゃんが同じ順序で発達するわけではないと考えられています。
ハイハイをせずに立つ赤ちゃんもいる
実際には、ハイハイの期間が短いまま、つかまり立ちや伝い歩きへ進む赤ちゃんもいます。
これは発達の順番の違いであり、それだけで異常とはいえません。
ただし、四つん這いの姿勢は体幹や手足の協調運動を育てる経験にもつながるため、歩き始めた後もトンネルくぐりや追いかけっこなど、床で四つん這いになる遊びを取り入れることは有用です。
発達障害以外に考えられる主な理由
ハイハイしない背景には、発達障害以外にもさまざまな要因があります。
たとえば以下のようなものです。
- うつ伏せが苦手で、腕や背中、体幹の筋力が育ちにくい
- おとなしい気質で、自分から移動しようとする意欲がまだ弱い
- 床が滑りやすい、スペースが狭いなど環境が合っていない
- 早産や筋緊張の特徴など、身体発達の個人差がある
ハイハイ以外に確認したい早期サイン

発達障害、特に自閉スペクトラム症の可能性が気になるときは、ハイハイの形よりも、対人反応やコミュニケーションの特徴を含めてみる必要があります。
視線が合いにくい
抱っこや遊びの場面で目が合いにくい、表情のやりとりが少ないなどは、早期サインとして話題になることがあります。
ただし、一時的な機嫌や周囲の刺激でも反応は変わるため、単発ではなく繰り返しみられるかが大切です。
名前を呼んでも振り向きにくい
CDCは9か月頃の発達の確認点として「名前を呼ぶと見る」を挙げています。
名前への反応がいつも乏しい場合は、聴こえの問題も含めて相談のきっかけになります。
身ぶりや共同注意が少ない
米国小児科学会は、早期の自閉スペクトラム症のサインとして、共同注意の遅れや乏しさを重視しています。
共同注意とは、物を見てから保護者の顔を見る、指さしした方向を見るなど、「相手と気持ちや注目を共有する力」です。
専門用語ですが、簡単にいうと「同じものを一緒に見るやりとり」です。
よくある状態と見方
以下の表では、赤ちゃんによくみられる動きの特徴と、受診の目安をまとめています。
| 状態 | よくある背景 | すぐに異常とはいえない理由 | 相談を考えたい目安 |
|---|---|---|---|
| シャフリング(いざりばい) | 移動方法の個人差、筋力や癖の違い | 代替的な移動としてみられることがある | 他の発達も遅れる、左右差が強い |
| 高ばい | 筋力がついている、感覚の好み | 一時的な移動パターンとしてみられる | 床に触れることを極端に嫌がる、他の感覚過敏もある |
| ズリバイが長い | 体幹筋力の未熟、うつ伏せが苦手 | 移動手段として十分な場合がある | ほかの運動発達も進みにくい |
| ハイハイしない | 発達順序の個人差 | ハイハイは必須の発達指標ではない | 座れない、移動しない、反応面も気になる |
| 左右非対称のハイハイ | 一時的な癖 | 短期間なら珍しくない | 片側ばかり使う、硬さ・弱さが目立つ |
心配なときの対処法

不安を感じたときは、まず日常の様子を落ち着いて観察することが大切です。
赤ちゃんの動きはその場では説明しづらいため、気になる場面をスマートフォンで動画に残しておくと、診察時に役立ちます。
家庭でできる工夫
家庭では、以下のような関わりが役立ちます。
- うつ伏せ遊びを短時間から取り入れる
- 少し離れた場所におもちゃを置いて、自分で取りに行けるようにする
- 滑りにくいマットを敷き、安全に動けるスペースを作る
- 四つん這いになる遊びを取り入れる
相談先
気になる場合は、以下の順で相談しやすいことが多いです。
- 乳幼児健診
- かかりつけの小児科
- 地域の保健センター
- 必要に応じて発達相談や療育機関
CDCも、節目の発達項目に達していない、いったんできていたことができなくなった、保護者が心配している、といった場合には早めに医師へ相談するよう勧めています。
赤ちゃんのハイハイに関するよくある質問

個性的なハイハイは将来の運動神経に影響しますか?
ハイハイの形と将来の運動能力を直接結びつける明確な根拠は限られています。
大切なのは、乳児期から幼児期にかけて、さまざまな姿勢や遊びを経験することです。
ハイハイしないまま歩いても問題ありませんか?
ハイハイをしない赤ちゃんは一定数おり、それだけで異常とはいえません。
ただし、全体の発達や対人反応に気になる点がある場合は、あわせて評価を受けることが大切です。
どのような場合に早めに受診したほうがよいですか?
次のような場合は一度相談をおすすめします。
- 1歳前後になっても移動手段がほとんどない
- 左右差が強く続く
- 視線が合いにくい、名前を呼んでも反応が乏しい
- できていたことができなくなった
まとめ

赤ちゃんのハイハイの仕方には大きな個人差があり、シャフリング、高ばい、ズリバイの長さ、ハイハイをしないことだけで発達障害を判断することはできません。
一方で、視線、名前への反応、共同注意、身ぶり、筋緊張、左右差など、他の発達面もあわせて気になる場合には、小児科や乳幼児健診で相談することが重要です。
保護者の「何となく気になる」という感覚は大切なサインです。
心配が続くときは、一人で抱え込まず、早めに専門家へつなげることが安心につながります。



