心療内科・精神科 渋谷区恵比寿の心療内科・精神科|ハロスキンクリニック恵比寿院 精神科・心療内科 コラム

大人のADHDの主な特徴

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目次

「ADHD」という用語がメディアでもよく見られるようになりました。

発達障害のなかで一般的に話題に上るのが「ADHD(注意欠如多動症)」です。

今回は、成人のADHDの診断基準に基づき、得意とすることや苦手とすること、そして適切な対応方法を解説します。

大人になってもつきまとうADHD症状

ADHD(注意欠如多動症)は、子どものみならず成人にも診断されることがあります。

通常、子ども時代のADHDは「無計画に発言する」「座って静かにするのが難しい」といった特徴で知られますが、成人した場合、持続的な集中力の欠如や詳細への注意が散漫になるため、職務や日常生活でのミスや忘れ物が頻発します。

多くの場合、小さい頃のADHDは顕著な症状がなく見落とされがちです。しかし、大人になり職場や家庭生活が始まると、新たな環境との調整が求められる中で、これまで覆い隠されていた問題が明らかになり、ADHDの特徴が顕在化します。

大人のADHDかも?一般的な問題を確認しよう

成人のADHDでしばしば見られる問題点を挙げます。

  • 周囲の音に敏感で、すぐに集中が途切れる
  • 環境の動きに気を取られ、手元の作業に没頭できない
  • 日常の業務や家庭内で何を先にすべきか決めかねる
  • 些細な出来事に過剰反応しやすく、感情のコントロールが難しい
  • 始めた活動を途中で放棄する傾向がある
  • 無計画な買い物をしがちである
  • 約束の時間や重要な期日に遅れがち
  • 財布や鍵など、大事な物を度々失くす
  • 忘れ物が多く、日々の細かなことを覚えていられない
  • 人との会話中、話の流れを追いきれずに内容を忘れる
  • 繰り返しの作業や読書、計算が苦痛に感じられる
  • 他人の話を中断して自分の話を始めてしまう

これらの挙動はADHDの診断基準そのものではありませんが、多くの項目に心当たりがあればADHDの可能性を疑うべきかもしれません。

ADHDにみられる主な症状

ADHDは主に三つの形態に区分されます。

不注意優勢型

通称「うっかり者」で知られるタイプです。 一般的に、誰もが忘れ物や約束を忘れることがありますが、ADHDの人々はこれが顕著です。 彼らは注意が散漫になりやすく、一つの事に長く集中するのが困難です。また、物の配置や整理が苦手な傾向にあります。

多動・衝動優位型

このタイプの人々は、長く静かに座っていることを避け、しばしば落ち着きのなさを感じます。 常に何かを動かしていないと不安を感じ、感情の波が激しくなりやすいです。思いついたことをすぐ行動に移すことが多く、計画性に欠ける場合があります。

混合型

このタイプは、「不注意」と「多動・衝動性」の両方の症状が見られます。これにより、日常生活での課題が複雑化し、多方面にわたる支援が必要になることがあります。

ADHDの発生原因

ADHD(注意欠如多動症)の成因は完全には解明されていませんが、脳の特定の領域の機能低下が関与しているとされています。特に、集中維持や計画立案に関わる前頭葉と、行動の調節を司る尾状核の活動不足が指摘されています。

さらに、神経伝達物質のバランスにも問題があると考えられており、「ドーパミン」の働きが重要です。ドーパミンは、情報の一時記憶や処理に必要なワーキングメモリの機能を支えますが、その不足はADHDの症状を引き起こす原因の一つです。

また、状況判断や適切な行動選択を可能にする「実行機能」の低下も、ADHDの症状として現れます。

ADHDとASDの違いを理解する

自閉スペクトラム症(ASD)も発達障害の一種であり、他者の感情を読み取ることや、表情や言葉のニュアンスを理解するのが困難です。

一方、ADHDでは、集中力の不足、行動の過剰性、衝動的な行動が特徴です。また、ASDには特定の興味や繰り返しの行動が見られることが多いです。

これら二つの症状が重なることがあり、ADHDとASDの両特性を持つ人もいます。集中できない理由が、単に気が散るため(ADHD)か、関心のない話題であるため(ASD)かの違いがあります。

診断では、これらの違いを見極めることが難しい場合があり、時にはADHDと診断された後でASDと診断が変更されることもあります。

自己疑念が引き起こす二次障害

ADHD(注意欠如多動症)には診断基準外の影響が存在し、幼少期からの失敗が多いことが自尊心を損なうことがあります。この経験は、「自分は何をしてもうまくいかない」というネガティブな自己評価を強化し、これが抑うつ症状などの二次障害へと進展するリスクを高めます。二次障害とは、本来の発達障害の特性により引き起こされる追加の心理的障害です。

ADHDにおける性別差

ADHDの症状は男女で異なる傾向が見られ、統計上男性の方が診断される頻度が高いですが、女性の場合は症状が内向的であることが多く、見過ごされがちです。現在得られている情報に基づくと、男女の間で症状の発現パターンや影響度に差異があることが指摘されていますが、これは一概にすべての個人に当てはまるわけではありません。

男女間の発生率

ADHDにおいては、男性と女性の発症率の比はおおよそ2.5:1から1.5:1とされています。

子供の頃は、男の子が診断されやすく、その結果男性の割合が高めに見えますが、成人になるとこの差は縮まる傾向にあります。

性別による症状の違い

男性のADHDは、一般的に「多動」や「衝動性」の特徴が顕著に現れることが多いです。

一方、女性では「不注意」が主な特徴として強く出ることが多く、この「不注意」は子供時代には目立ちにくいため、女性のADHD診断が少ない一因となっています。

ADHDの診断プロセス

発達障害の一つであるADHD(注意欠如多動症)は、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)に基づいて診断されます。主に「不注意」と「多動性/衝動性」の二つのカテゴリーが診断の中心です。

具体的な診断項目を掘り下げます。

不注意の特性

以下の挙動が6ヶ月以上持続し、5つ以上該当する場合に、不注意と診断されます

  • 細部への注意が散漫。
  • タスクや活動でのミスが頻発。
  • 長期間の注意維持が困難。
  • 他人からの話を聞いているように見えない。
  • 与えられたタスクを完遂できない。
  • タスクを組織的に進めるのが苦手。
  • 課題に持続的に取り組むことができない。
  • 日常的に物を失くすことが多い。
  • 外部の刺激に容易に気を取られる。
  • 日常的に物事を忘れる。

多動性と衝動性の行動特性

ADHDの診断における「多動性/衝動性」の側面は、下記の行動が6ヶ月以上継続し、そのうち5つ以上が当てはまる場合に該当します。また、これらの行動が12歳未満から見られ、日常生活の複数のシーンで影響を及ぼしている必要があります。

多動性/衝動性の表れ

  • 手足を絶えず動かし、座っている時も静かにしていられない。
  • 長時間座っていることができず、しばしば席を離れる。
  • 常に何かを動かしていないと落ち着けない。
  • 静かな活動に没頭するのが困難。
  • 活動的であり、静かにすることに不快感を感じる。
  • 話す量が多く、会話が止まらない。
  • 他人の話を途中で遮ってしまい、自分の言いたいことを優先する。
  • 他人の活動を中断することがあり、しばしば社会的な摩擦を引き起こす。

ADHDの包括的治療手法

ADHD(注意欠如多動症)の治療には、薬物療法と個人の自己認識を深める行動調整が中心とされています。

ADHD治療用の医薬品

日本で使用が承認されているADHD治療薬は以下の4つです。これらの薬は、集中力を向上させたり、衝動的な行動や活動過多を抑制する助けとなります。

日本で承認された治療薬

  • コンサータ
  • ストラテラ
  • インチュニブ
  • ビバンセ(18歳未満のみ対象)

治療薬の使用に関しては医師との密接な相談が必要です。副作用が強く感じられる場合や、症状が安定していると感じた場合も、自分だけで薬の量を変更せず、診察の際に医師に相談し、適切な調整を依頼することが重要です。

自己認識と支援

ADHDの理解を深めるには、医療専門家やカウンセラーとの定期的な対話が効果的です。また、親しい人からのフィードバックも有用で、自分自身の行動パターンやコミュニケーションスタイルを客観的に知ることができます。適切な行動戦略を習得し、日常生活や職場での効率を向上させるためのトレーニングも重要です。

ADHD当事者に適した職種

日本でも公にADHDであるとカミングアウトする著名人が増えており、社会的な認識も変わりつつあります。ADHDには不注意や衝動性といった課題が伴う一方で、創造性や独自の視点を持つ人も多く、これらの才能を生かした職業が向いています。

ADHD特性が活かせる職業例

  • コンテンツ制作関連:
    編集者、ジャーナリスト、映像ディレクター、フォトグラファー
  • クリエイティブ職:
    シェフ、機械技術者、プログラマー、アニメーター、グラフィックデザイナー
  • 専門的職業:
    研究員、学術者、塾講師、教師

ただし、仕事を選ぶ際には自分の関心とスキルが求められる環境を選ぶことが重要です。顧客や上司の要望に応じながら、自分のアイデアや計画を適応させる能力が求められるため、双方が納得できる解決策を常に模索することが大切です。

職場での課題と解決策

スケジュール管理の難しさ

注意欠如多動症(ADHD)を持つ人々は、しばしば仕事の優先順位の設定や多任務処理が苦手です。これが、日程や計画の管理を難しくしています。

解決策 スケジュールの管理に課題を抱える場合、主に二つの理由が考えられます。

一つ目は、「設定された計画が現実的でない」場合です。 計画自体が非現実的な場合、タスクに必要な時間を再評価し、優先順位を再設定する必要があります。 タスクの所要時間を見直し、重要度や緊急度に基づいて優先順位を整理することが重要です。 また、客観的な評価が可能であれば、同僚の意見を参考にするのも有効です。

二つ目は、「適切に計画されていても実行が追いつかない」場合です。 この際は、計画の見直しを定期的に行うことが効果的です。 計画初期には、「特定の段階までに進捗が見られない場合は責任者に報告する」といったリマインダーを設けることが助けになります。

また、予期せぬタスクが増える場合もあります。ADHDを持つ人は視覚的情報の整理が得意なため、進行状況やタスクリストを視覚的にトラックする方法を用いると良いでしょう。これにより、常にタスクの優先度や重要性を把握しやすくなります。

職場でのADHDに関する一般的な課題と対応法

タスクの管理に困難がある

注意欠如多動症の影響で、作業の優先順位付けやタスクの同時進行が困難で、日程や計画を立てるのが苦手な人が多いです。

対処法 このような問題に対しては、具体的なシナリオに分けて考えると良いでしょう。

まず、「現実と合わない計画を立ててしまう」ケースでは、必要な作業時間の見直しや優先順位の調整が求められます。 作業時間を見直し、重要なタスクから順に取り組むようにしましょう。 外部からの意見を取り入れることも有効です。

次に、「計画通りに進めるのが難しい」場合、計画の修正を頻繁に行うことが推奨されます。 初めに「特定の目標に達していない場合は直ちに上司に報告する」といった措置を計画に盛り込みましょう。

また、計画が変更になる場合がありますので、視覚的なツールを使ってタスクの進行状況を管理することが効果的です。

「うっかり」ミスの頻発

日常や業務上での「うっかり」ミスはADHDの顕著な特徴の一つです。

対処法 ミスが発生しやすい状況を特定し、原因を分析しましょう。 ミスが多発するタスクには、リストやチェックシートを用いると良いでしょう。 他者に事前に確認を依頼することも一つの手段です。

完璧を求めるのではなく、ミスを最小限に抑えるための戦略を考えることが重要です。 ミス発生時の対応計画も立てておくと安心です。

重要な予定や締切の見落とし

タイムマネジメントの失敗は、仕事での信頼を損ねる原因となり得ます。

対処法 デジタルツールやアナログツールを駆使して予定を管理しましょう。 直接的な指示が得られる場合は、即座にメモを取り、習慣的にそれを確認することが重要です。 スマホやPCのアラート機能を活用し、重要なタイミングで通知が来るように設定すると効果的です。

作業中の集中力の欠如

集中を維持するのが難しいADHDの特性は、特に単調な仕事において顕著に現れます。

対処法 短い周期で休憩を取り、集中力をリフレッシュしましょう。 タイマーを設定して、作業と休憩のリズムを作ることが役立ちます。

周囲の刺激が気になる場合は、視覚的障壁を設けて集中しやすい環境を整えることも一つの方法です。

ADHD診断後の相談窓口とサポート

ADHDと診断された場合や、その可能性があると思われる際には、専門のサポート機関へ相談することが推奨されます。ここでは、生活や職場での課題を解決するための相談窓口をご紹介します。

日常生活での課題解決のための相談窓口

ADHDに関連する日常的な困りごとを支援する機関として、以下の施設が利用可能です。

発達障害支援センター

発達障害のある個人に対して包括的な支援を提供する施設で、多くの地方自治体に設置されています。

地域精神保健福祉センター

精神保健に関する相談、支援、啓発活動を行う公的機関で、全国の各都道府県にあります。

支援グループや家族会

同じ悩みを持つ人々が集まり、経験や解決策を共有する自助グループや家族支援の会。

職場での支援相談窓口

職業生活における支援が必要な場合、以下の施設からサポートを受けることができます。

就労支援センター

障害を持つ人々の職場への移行支援や就労継続を目的とした施設。

地域障害者職業センター

職業リハビリテーションや職場適応訓練などを提供し、障害者の就労をサポートする施設。

障害者就労生活支援センター

障害者の職業的自立を支援し、生活全般の相談に応じる施設。

ハローワーク

一般的な職業相談および仲介を行うと同時に、障害者雇用を専門に扱う担当者が配置されている施設もあります。

これらの支援施設では利用条件が定められていることがありますので、詳細は直接確認することが大切です。

ADHD当事者の職場適応ストーリー

ここでは、当社の就労移行プログラムを利用した元訓練生たちの成功事例をお届けします。

職場での挑戦から新たな一歩へ

30代女性

クリエイティブ業界での編集職に就職しましたが、マルチタスクの難しさから段々と業務が遂行困難になり、最終的には退職を選択しました。その後、健康診断で「不注意優勢型ADHD」の可能性が指摘され、専門的な職業訓練を受けました。現在はDTPオペレーターとして再就職し、障害を理解してくれる環境で持続可能に活躍中です。

環境変化がもたらした自己肯定感の向上

20代後半女性

高校卒業後、接客業に従事しましたが、覚えの遅さや柔軟な対応が求められる状況についていけずに苦労しました。頻繁な遅刻も重なり、周囲に迷惑をかけがちでした。心療内科でADHDと診断された後、専門の支援施設で職業訓練を受け、IT企業への就職に成功。肯定的な職場文化の中で、自信を持って働けるようになりました。住まいのパートナーからも「最近の君は明るいね」と言われるようになり、大きな自信につながっています。

ADHDの困難が生み出す独特な才能

ADHDの成人は日々、注意散漫や衝動性といった挑戦に直面していますが、これらは往々にして自分の努力不足ややる気の問題と誤解されがちです。これは脳機能の特性から生じることが多く、理解されにくい一面もあります。

しかし、ADHDは単なる挑戦だけではなく、創造的な仕事やアイデアを形にする職業においては顕著な利点をもたらすことも。たとえば、独自の発想力や素早い意思決定が求められる環境では、ADHDの方がその才能を発揮しやすいです。

最近では、ADHDの当事者が自らの状況を公表し、その特性を生かした活動を行う例が増えています。これは社会全体の理解を深め、ADHDのポジティブな側面を浮かび上がらせるのに貢献しています。

ADHDが疑われる場合、専門的な支援を受けることで、生活や職場での課題に対処する手助けが得られます。専門機関では、困りごとへの対応策を提案し、個々の状況に合わせたサポートを行っています。






 

よくある質問

Q.大人のADHDの主な特徴は何ですか?

大人のADHDには、不注意、多動性、衝動性などの特徴があります。これにより、職場や家庭でのミスや物忘れが頻発し、持続的な集中力の欠如や詳細への注意不足が問題となることが多いです。

Q.ADHDの診断基準にはどのような項目がありますか?

ADHDの診断基準には「不注意」と「多動性/衝動性」の二つのカテゴリーがあります。不注意では、細部への注意散漫、タスクでのミス、長期間の注意維持の困難などが含まれます。多動性/衝動性では、手足のそわそわ、長時間座っていられない、話しすぎるなどの特徴があります。

Q.ADHDの治療にはどのような方法がありますか?

ADHDの治療には、薬物療法と個人の自己認識を深める行動調整が中心です。日本で承認されている治療薬にはコンサータ、ストラテラ、インチュニブ、ビバンセなどがあり、これらは集中力の向上や衝動的な行動の抑制に役立ちます。また、医療専門家やカウンセラーとの対話やトレーニングも重要です。

 



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監修医師

草薙威史 先生

草薙威史 先生

経歴
  • 山形大学医学部 卒
  • 二本松会山形病院
  • 飯沼病院
  • 星ヶ丘病院
  • さとうメンタルクリニック
  • 新宿溝口クリニック
  • ナチュラルアートクリニック
  • 新宿廣瀬OPクリニック
  • ひめのともみクリニック
  • 三田こころの健康クリニック新宿
  • 医療法人社団TLC医療会 ブレインケアクリニック 理事長
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