統合失調症の人は本当に寿命が短いのか

統合失調症のある人は、一般人口と比べて寿命が短い傾向があることが、多くの研究や国際機関の報告で一貫して示されています。
これは「統合失調症と診断されたら必ず短命になる」という意味ではありませんが、身体疾患や生活習慣、治療継続のしやすさ、社会的支援の有無などが重なり、健康上の不利益が生じやすいことは確かです。
統合失調症に関する大規模なメタ解析では、一般人口に比べて平均で約14.5年寿命が短くなると報告されています。
さらに近年の政策提言や日本語資料でも、統合失調症のある人は一般人口よりおおむね15〜20年早く死亡する傾向があるとされており、この評価は現在も大きく変わっていません。
寿命差の目安
複数の研究結果を総合すると、統合失調症のある方の平均寿命は、一般の方よりおよそ10〜20年ほど短くなることが報告されています。
| 一般人口との差 | 約10〜20年以上短いとする報告が多い |
|---|---|
| 2017年の大規模メタ解析 | 平均約14.5年短い |
| 近年の政策提言・総説 | 15〜20年早く死亡する傾向 |
| 臨床的に重要な点 | 身体疾患と自殺リスクの両方に注意が必要 |
男女差はあるのか
統合失調症では、女性の方が発症年齢が遅く、経過が比較的良好な傾向があるとされます。
しかし寿命に関しては、男女ともに一般人口より短縮が認められ、どちらの性別でも身体疾患への対策が重要です。
日本の簡易生命表では、2024年の平均寿命は男性81.09歳、女性87.14歳でした。
これに対して統合失調症では、男性が60歳前後、女性が60歳台後半とする報告が多く、一般人口との差が大きいことが分かります。
| 日本の男性一般人口 | 約81.09歳 |
|---|---|
| 日本の女性一般人口 | 約87.14歳 |
| 統合失調症の男性 | 60歳前後とする報告が多い |
| 統合失調症の女性 | 60歳台後半とする報告が多い |
なぜ統合失調症では寿命が短くなりやすいのか

統合失調症で寿命が短くなりやすい理由は一つではなく、身体疾患の増加、自殺リスク、治療中断、社会的孤立が互いに影響し合っています。
とくに重要なのは、精神疾患でありながら、死亡原因の中心が身体の病気にもあるという点です。
身体疾患(生活習慣病など)の影響
統合失調症のある人では、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患、糖尿病、脂質異常症、肥満などのリスクが高いことが知られています。
日本の精神科領域の文献でも、統合失調症では20〜30代の若い年代からメタボリックシンドロームや生活習慣病リスクが高いことが指摘されています。
背景には、食生活の乱れ、運動不足、喫煙率の高さ、受診の遅れ、一部の抗精神病薬による代謝異常などがあります。
実際には、自殺だけでなく、こうした身体疾患が寿命短縮に大きく関わっています。
| 心血管疾患 | 心筋梗塞や脳卒中のリスク上昇につながる |
|---|---|
| 糖尿病 | 血管障害や全身合併症を起こしやすい |
| 肥満・脂質異常症 | 動脈硬化を進めやすい |
| 喫煙 | 心血管疾患、呼吸器疾患、がんのリスクを高める |
| 運動不足 | 体重増加や代謝異常を招きやすい |
自殺リスクの高さ
統合失調症では、自殺が若年死亡の大きな要因の一つです。特に、発症初期、再発時、抑うつが強い時期、治療中断時、退院直後などは注意が必要とされています。
幻覚や妄想が強くなると判断力が低下し、危険な行動につながることがあります。そのため、再発の兆しや不眠、強い不安、希死念慮がみられる場合は、早めの受診や相談が重要です。
| 発症初期 | 症状への戸惑いや不安が強い |
|---|---|
| 再発時 | 幻覚・妄想や抑うつが強まりやすい |
| 治療中断時 | 症状悪化や希死念慮につながりやすい |
| 退院直後 | 生活環境の変化が大きい |
| 孤立している時 | 相談機会が少なく悪化に気づきにくい |
治療中断と社会的孤立の悪循環
通院や服薬が不安定になると、症状再燃のリスクが高まり、再入院や生活の不安定化につながります。さらに、家族支援の乏しさ、失業、経済的不安、福祉サービス未利用などが重なると、身体疾患の発見や治療も遅れやすくなります。
社会的孤立は精神症状だけでなく、身体の健康にも影響します。医療機関につながり続けることと、生活面の支援を受けられる状態を保つことの両方が大切です。
| 失業・経済的不安 | 通院や生活管理が不安定になりやすい |
|---|---|
| 家族の支援不足 | 服薬・受診継続が難しくなる |
| 孤立 | 不調に気づいてもらいにくい |
| 福祉制度の未利用 | 生活支援が届かず悪化しやすい |
アルコールや薬物乱用による影響
統合失調症のある人のなかには、精神的なつらさや不安感を一時的に和らげようとして、アルコールや市販薬などに頼ってしまうケースが少なくありません。
しかし、こうしたアルコールや薬物の乱用は、脳や身体に大きな負担をかけ、健康を著しく損ねる原因となります。
結果として、急性の心疾患などの重篤な身体合併症を引き起こしやすくなり、寿命が縮む大きな要因の一つとして挙げられています。
アルコールや薬物に依存せず、適切な治療や相談機関を通じて精神的な安定を図ることが非常に重要です。
薬は寿命を縮めるのか

抗精神病薬には、体重増加や血糖上昇などの副作用がみられることがあります。
しかし、薬を適切に使用して症状を安定させることは、再発や自殺リスクの低下につながるため、「薬=寿命を縮める」と単純には言えません。
複数の研究では、抗精神病薬を適切に使用している人の方が、未治療や治療中断の状態よりも死亡リスクが低い可能性が示されています。
重要なのは、副作用を放置せず、身体面の管理とあわせて治療を続けることです。
副作用への対策が重要
統合失調症薬物治療ガイドライン2022でも、肥満や糖尿病を含む身体合併症への配慮が重要とされています。
そのため、薬物療法では精神症状の改善だけでなく、身体面のモニタリングも並行して行うことが大切です。
| 体重・BMI | 体重増加の早期発見 |
|---|---|
| 腹囲 | 内臓脂肪の蓄積確認 |
| 血圧 | 高血圧の確認 |
| 血糖値・HbA1c | 糖尿病の確認 |
| 脂質検査 | 脂質異常症の確認 |
| 喫煙・食事・運動 | 生活習慣の見直しにつなげる |
副作用が軽減された第2世代抗精神病薬の役割
統合失調症の治療薬は日々進歩しており、近年では副作用が比較的軽減された第2世代抗精神病薬が主流となっています。
海外の調査データでは、この第2世代抗精神病薬を継続して使用することが、全死亡率や死因別の死亡リスクを低下させる要因の一つとして報告されています。
また、薬が体に合って症状が安定し、入院頻度が低く抑えられることも生存率の改善につながるとされています。
自己判断で薬を減らしたりせず、主治医と相談しながら自分に合ったお薬を見つけることが重要です。
寿命を延ばすためにできること

統合失調症の寿命短縮には、変えられる要因も多く含まれています。
薬物療法、身体管理、生活習慣改善、福祉的支援を組み合わせることで、健康寿命を延ばせる可能性があります。
生活習慣の見直し
禁煙、運動、食事、睡眠の見直しは、身体疾患予防の基本です。
特に喫煙対策は重要で、禁煙外来や支援プログラムの活用も有効です。
| 禁煙 | 禁煙外来、ニコチン依存への支援活用 |
|---|---|
| 運動 | 散歩、ストレッチ、軽い筋トレ |
| 食事 | 野菜・魚・大豆製品を増やす |
| 睡眠 | 起床・就寝時間を整える |
治療継続と早めの相談
自己判断で服薬や通院をやめないことは、再発予防のために重要です。
副作用がつらい場合でも中断せず、主治医に相談して薬の調整を検討することが勧められます。
医療と福祉を一緒に使う
医療だけでなく、訪問看護、デイケア、就労支援、相談支援などを組み合わせることで、孤立を防ぎやすくなります。
生活全体を支える体制が整うことで、治療継続だけでなく、身体疾患の早期発見や早期治療にもつながります。
| 訪問看護 | 服薬確認、体調把握、生活支援 |
|---|---|
| デイケア | 生活リズムの安定、居場所づくり |
| 就労支援 | 社会参加と生活基盤づくり |
| 相談支援 | 制度利用や困りごとの整理 |
| 家族支援 | 再発サインの共有、孤立予防 |
経済的負担を減らす公的制度の活用
統合失調症の治療は長期間にわたることが多いため、医療費などの経済的な負担が不安で通院をためらってしまう方も少なくありません。
そのような場合は、負担を軽減できる公的制度の活用をご検討ください。
たとえば自立支援医療制度を利用すると、通院や薬代の自己負担割合が軽減されます。
また精神保健福祉手帳を取得することで、税金の控除や交通機関の割引など、生活面でのさまざまな支援を受けられるようになります。
詳しい申請方法は、お住まいの自治体や通院先の医療機関で相談してみましょう。
渋谷駅前心療内科ハロクリニックのサービス紹介
渋谷駅前心療内科ハロクリニックは、困ったときすぐに診察を受けられるよう、患者様の心に寄り添った診療を提供しています。
平日の10時から19時まで開院しており、大学病院等で豊富な経験を持つ精神科専門医が幅広い心のお悩みに対応します。(※16歳以上の方が対象です)
渋谷駅前心療内科ハロクリニックが選ばれる理由
当クリニックは、患者様が安心して治療を始められ、無理なく通院を継続できるような環境づくりに力を入れています。
ここでは、多くの方に当院が選ばれている3つの理由を詳しくご紹介します。
診断書類は最短で初診当日に発行が可能
つらい症状を抱えており、職場や学校を休むために一刻も早く診断書が必要な方のために、当院では最短で初診当日に診断書を発行することが可能です。
適切な休養をいち早く取っていただけるよう、スムーズな対応を心掛けています。
また、病気で働けなくなった際の経済的保障を目的とした傷病手当金の申請書作成にも対応しています。
各種書類の発行を通じて、患者様が安心して休養に専念できるサポート体制を整えています。
渋谷駅から徒歩30秒で通院しやすい
心療内科や精神科の治療では、症状が安定するまで定期的に通院を継続することが非常に重要です。
そのため、当院は渋谷駅C1出口から徒歩30秒という非常にアクセスの良い場所に位置しています。
また、平日は10時から19時まで診療を行っており、LINEから最短1分で当日予約も可能です。
急な体調不良を感じた際や、お仕事帰りなど、いつでも気軽に立ち寄れる利便性の高さが特徴です。
各種保険や自立支援医療制度に対応
長期的な通院が必要となる場合、医療費の自己負担が大きな悩みの種になりがちです。
当院は精神科・心療内科の保険診療機関であり、健康保険を利用した診療が可能です。
さらに、指定医療機関として自立支援医療制度にも対応しているため、要件を満たす方は医療費の自己負担額を軽減することができます。
費用に関するご不安がある方も、各種制度を活用して安心して治療に専念していただけます。
まとめ

統合失調症のある人は、一般人口より寿命が短い傾向があり、近年も15〜20年程度の寿命格差があると報告されています。
背景には、身体疾患、自殺、治療中断、社会的孤立が複雑に関わっており、精神科治療だけでなく身体の健康管理も欠かせません。
一方で、禁煙、運動、食事、定期受診、服薬継続、福祉サービスの活用など、改善できる要因は少なくありません。
参考文献・出典
- World Health Organization (WHO). Schizophrenia.
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/schizophrenia - Hjorthøj C, et al. Years of potential life lost and life expectancy in schizophrenia. Lancet Psychiatry, 2017.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28237639/ - 厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況.
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life23/dl/life23-15.pdf - 日本神経精神薬理学会・日本臨床精神神経薬理学会. 統合失調症薬物治療ガイドライン2022.
https://www.jsnp-org.jp/csrinfo/img/togo_guideline2022_0817.pdf - 国立精神・神経医療研究センター. Schizophrenia – Time to Commit to Policy Change; Updated Report 2024 日本語版案内.
https://www.ncnp.go.jp/topics/detail.php?%40uid=3PtEx3IdyKWsE8Qx - 沖縄県医師会報 2025年3月号「統合失調症と生命予後」.
https://www.okinawa.med.or.jp/wp-content/uploads/2025/03/02_CONTENTS%EF%BC%88%E7%9B%AE%E6%AC%A1%EF%BC%89.pdf



