適応障害は、大きな変化やストレスのある状況に直面した時、上手く適応できず、心理的な苦痛や日常生活の機能の低下することを言います。医師の診断には、主にその症状の種類と重さが考慮されます。それぞれの患者によって症状の強度や影響の程度が異なります。
適応障害とは
新しい学校や職場へ入ったり、知らない土地への引っ越しなどの新生活や、大切な人との別れなど、人生における大きな変化に慣れるには、誰でも少し時間がかかると思います。徐々に慣れてきて、楽しく日常生活を送れるようになる。これが「適応」っていうことです。
ですが、中には「新しい環境になじめない」「変化が怖い」と感じることが長く続いて、気分が落ちたり、お腹が痛くなったりする人もいます。このような”適応できない”症状を「適応障害」と言います。
適応障害が起きるとどうなる?
ふと悲しくなったり、学校や会社に行くのが怖くなったりすることがあります。それは、新しい環境に慣れるのが少し難しくなってしまっているだけで、自分のせいではありません。元気な人でも、誰にでも起こりうることです。
適応障害の症状
気分の落ち込み
気分が落ち込む、何をするにも意欲が湧かない、悲しみや絶望感が強い。
不安感
不安感が強まり、心配事が頭から離れない、将来に対する恐れ。
情緒不安定
普段は気にならないことにもイライラしやすくなり、怒りっぽくなる。気分の変動が激しく、感情のコントロールが難しい。
睡眠障害
寝つきが悪くなる、夜中に何度も目が覚める、過度に眠る。
食欲不振または過食
食欲が落ちて体重が減る、またはストレスから食べ過ぎてしまう。
集中困難
仕事や勉強に集中できない、物忘れが多くなる。
無関心で引きこもり
仕事や学業に対する興味・関心が低下する。友達と会うのを避け、社会的な活動から距離を置く。
適応障害の心理的な変化によって、不安や悲しみなどのネガティブな感情が強く出ることがあります。この感情が、日常生活に影響して、学業や仕事への活力、友だちとの関わりなど、さまざまな弊害が生まれます。
適応障害の疑いがある時は
自分や周りの大切な人が適応障害の症状で困っていると感じたら、優しく声をかけてあげましょう。そして、「大丈夫だよ」と励ますことが大切です。
また、心療内科や精神科の医師や心理カウンセラーに相談しましょう。
心理カウンセラーは、医師や他の健康専門家と連携することが多く、クライアントが全面的なケアを受けられるように協力します。カウンセリングを受けた後、心理カウンセラーが何らかの心理的問題に気づいた場合、適切な医師に紹介することもあります。
心療内科か精神科で診断を受けよう
適応障害は、心療内科や精神科の医師が診断します。一般的には、心理カウンセラーは医学的な診断を行う資格は持っていません。
心理状態に関する医学的な診断は、心療内科や精神科の医師など、医師資格を持つ専門家が行います。これらの専門家は、症状の評価、適切な診断、および必要に応じて薬物治療の処方を行うことができます。
心療内科や精神科は予約が取りにくい
目に見えて分かる身体の不調ではなく、主に精神面を扱う専門科の性質上、診察に時間をかけ問診します。1日に入れられる予約数が限られています。
初めて受診する場合は、特に時間をかけ緊張をほぐし、話しやすい雰囲気作りも大切になり、より時間がかかる場合があります。
「初診30分~1時間程度」「再診10分~30分程度」これくらいの所要時間をみていただければ良いと思います。
適応障害と診断されたら、学校や職場に提出しよう
診断結果で、「自宅療養」「休職」などが書いている場合があります。主治医との話し合いで、少しの間お休みしましょうとなる場合、診断書にもその旨が記載されます。
その場合は、学校を欠席もしくは休学、会社を欠勤もしくは休職することが望ましいです。
お休み中は何すればいい?
焦りは禁物!休んでいるからって不安に思う必要はひとつもありません。とにかく身体のこころも全力でお休みしましょう。
また、元気が出てきたら、心身の健康を維持・回復するための活動を取り入れることが大切です。
- 適度な運動
- 栄養バランスの良い食事
- 十分な睡眠
- 整理整頓
- 定期的な換気
- こころが落ち着く時間を作る
- 趣味や興味のあることを楽しむ
- 家族や仲の良い友だちとコミュニケーションを取る
お休み中は、身体だけでなくこころのケアも大切にし、無理せずマイペースで日々を過ごすことが回復への近道です。
また、定期的な通院で、療養期間の出来事や自分の症状、気になることなどを、医師に報告しましょう。
まとめ
適応障害は、適切な治療や心理カウンセリング、薬物療法を行えば、改善の見込みのある状態です。症状がひどくなると、精神的な症状以外にも、頭痛や腹痛など身体的な症状にもつながることがあります。
適応障害の抑うつ症状は一時的なものであることが多いですが、症状が改善されない場合やストレス反応が長期間続く場合、より深刻な「うつ病」に発展するリスクがあります。
うつ病は、適応障害よりも症状の程度が重く、持続時間が長い特徴があります。適応障害においては、ストレス源が取り除かれると症状が改善しますが、うつ病では症状が持続し、日常生活に著しい影響を及ぼすことがあります。
適応障害からうつ病への移行を防ぐためには、家族やパートナーによる適切なサポートと医師による治療によって、適応障害の症状を管理することが望ましいでしょう。
よくある質問
- Q.適応障害とはどのような状態ですか?
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適応障害は、大きな変化やストレスに適応できず、心理的苦痛や日常生活の機能低下が起こる状態です。気分の落ち込み、不安感、情緒不安定、睡眠障害などの症状が現れます。
- Q.適応障害の診断はどのように行われますか?
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適応障害の診断は、心療内科や精神科の医師が患者の症状の種類や重さを評価し、他の疾患と区別することで行います。心理カウンセラーが診断を行うことはできません。
- Q.適応障害と診断された場合、どのように対処すればよいですか?
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適応障害と診断された場合、心療内科や精神科の指導のもと、薬物療法や心理カウンセリングを受けることが推奨されます。また、適度な運動やバランスの良い食事、十分な睡眠など、生活習慣の改善も重要です。