【大人向け】世界保健機関(WHO)作成のADHDセルフチェックリスト
ここで紹介するのは、世界保健機関(WHO)が作成した「成人ADHD自己記入式症状チェックリスト(ASRS-v1.1)」です。
これは、成人のADHDのスクリーニングツールとして世界中で広く利用されているものです。
ADHDの診断そのものとは異なりますが、ADHDの特性がどの程度見られるかを客観的に評価し、専門医への相談を検討する際の参考になります。
質問は過去6ヶ月間の自身の行動や感覚について答える形式になっています。
パートA:ADHDの可能性を判断する6つの質問
パートAの6項目はADHDの症状の中でも特に頻度が高く診断の際に重要視される質問で構成されています。
これらの質問は主に物事の最後まで注意を続けることの困難さや順序立てて何かを行うことの苦手さといった「不注意(注意欠陥)」に関連する特性を評価するものです。
例えば「気が散りやすい」「約束を忘れる」といった具体的な行動についてその頻度を5段階で回答します。
このパートAの質問のうち特定の4項目以上が該当する場合にADHDの可能性がより高いとされています。
パートB:具体的な症状の頻度を確認する12の質問
パートBでは、パートAの内容をさらに掘り下げ、より具体的な12の症状について質問します。
ここには、じっとしていられない、そわそわするといった「多動症」に関連する項目や、人の話を遮って話し始める、順番を待つのが苦手といった衝動性に関する項目が含まれます。
また、片付けが苦手で部屋が散らかってしまう、感情の起伏が激しいといった日常生活における具体的な困りごとについても問われます。
パートBに答えることで、自身の行動パターンや特性をより多角的に把握することができます。
チェックリストの結果の評価方法
ASRS-v1.1の評価では、特にパートAの結果が重視されます。
パートAの6つの質問のうち、グレーで網掛けされた4つの質問に「ときどき」以上でチェックがついた場合、ADHDの特性を持つリスクが高いと判断されます。
ただし、これはあくまで簡易的なスクリーニングの結果であり、ADHDであると確定するものではありません。
このチェックリストは、自身の困りごとがADHDの特性と関連があるかを考えるための材料であり、正確な診断のためには専門医による詳細な診察が必要です。
ADHDの主な3つの症状タイプ

ADHDはその特性の現れ方によって、主に3つのタイプに分類されます。
どの症状が優勢であるかによって分けられ、個人の特性を理解する上で参考になります。
代表的なのは不注意、多動・衝動性のタイプであり、両方を併せ持つ場合もあります。
また、LD(学習障害)やASD(自閉スペクトラム症)といった他の発達障害と併存するケースも少なくありません。
自身のADHDの傾向を知ることは、適切な対処法を見つける第一歩となります。
不注意優勢型:うっかりミスや忘れ物が多い
不注意優勢型は、集中力を持続させることが難しく、ケアレスミスや忘れ物が多いといった特徴が目立つタイプです。
仕事や学業において、細かい部分への注意が散漫になりがちで、指示を聞き逃したり、物をなくしたりすることが頻繁に起こります。
また、物事を順序立てて計画し、実行することが苦手な傾向もあります。
多動性は目立たないため、周囲からは「おとなしいけれど、どこか抜けている人」と見られがちで、ADHDの特性だと気づかれにくいことも少なくありません。
多動・衝動性優勢型:落ち着きがなく衝動的に行動してしまう
多動・衝動性優勢型は、じっとしていることが苦手で、常にそわそわと体を動かしているような落ち着きのなさが特徴です。
会議中に座っていられなかったり、貧乏ゆすりが多かったりします。
衝動性としては、相手の話が終わる前に話し始めてしまう、思いついたことを深く考えずに行動に移してしまうといった傾向が見られます。
このため、人間関係で誤解を招いたり、計画性のない行動で失敗したりすることがあります。
子供の頃に比べ、大人では多動性が内面的な落ち着きのなさとして現れることもあります。
混合型:不注意と多動・衝動性の両方の特性が見られる
混合型は、これまで述べた「不注意」と「多動・衝動性」の両方の特性を併せ持つタイプです。
そのため、集中力が続かずにミスをしやすいといった不注意の症状と、じっとしていられず衝動的に行動してしまうといった多動・衝動性の症状が、生活の様々な場面で現れます。
ADHDを抱える人の中で最も多いのがこの混合型とされています。
症状の現れ方やその程度には個人差がありますが、日常生活や社会生活で感じる困難さが多岐にわたる傾向があります。
【子供向け】ADHDの可能性がある子に見られる行動の特徴

子供のADHDは、成長段階における行動として見過ごされがちですが、家庭や集団生活での特有のサインに気づくことが重要です。
特に幼児期から学童期にかけては、その行動が年齢相応のものか、発達特性によるものか、親や家族でも判断が難しい場合があります。
ここでは、ADHDの可能性がある子供に見られる行動の特徴を、家庭と園・学校の場面に分けて具体的に紹介します。
これらのサインは、専門機関への相談を検討する際の参考になります。
家庭生活でよく見られるサイン
家庭は子供が最もリラックスできる場所ですが、ADHDの特性が見られることもあります。
例えば、2歳頃の幼児期では、危険を顧みずに道路に飛び出す、静かに過ごす場面でじっとしていられないといった多動性が目立ちます。
7歳頃の学童期になると、宿題やお手伝いを始めてもすぐに他のことに気を取られてしまう、片付けが極端に苦手で部屋が散らかったままである、といった不注意の傾向が顕著になります。
また、欲しいものを我慢できずに癇癪を起こす、兄弟喧嘩で手が出やすいなど、衝動的な行動もよく見られるサインです。
園や学校での集団生活で見られるサイン
集団生活の場では、ADHDの特性がより明確に現れることがあります。
授業中に席を立って歩き回る、先生の話を最後まで聞かずに質問し始める、友達の遊びに割り込むなど、集団のルールを守ることが難しい場面が見受けられます。
忘れ物や持ち物の紛失が頻繁に起こるのも特徴です。
特に12歳頃までの学齢期では、これらの行動が原因で友達とのトラブルになったり、学業に集中できなかったりすることで、本人が孤立感や劣等感を抱えてしまうことも少なくありません。
チェックリストでADHDの傾向があった場合の対処法

セルフチェックでADHDの可能性が高いという結果が出た場合、それを一人で抱え込む必要はありません。
専門家への相談や日常生活の工夫によって、困りごとを軽減させることが可能です。
チェックリストの結果は、確定診断ではなく、あくまで自身の特性を理解し、次の行動を起こすためのきっかけと捉えることが建設的です。
ここでは、ADHDの傾向が見られた場合に考えられる具体的な対処法を3つのステップで紹介します。
精神科や心療内科などの専門医療機関へ相談する
ADHDの特性によって日常生活に支障が出ている場合は、精神科や心療内科、あるいは「大人の発達障害」を専門とするクリニックへ相談することを検討します。
専門医は、詳しい問診や心理検査、生育歴の確認などを通じて総合的な評価を行い、診断を下します。
セルフチェックの結果だけでは確定診断には至りません。
医療機関を受診することで、自身の特性を正しく理解できるだけでなく、必要に応じてカウンセリングや薬物療法など、適切な治療やサポートを受けることが可能になります。
受診前に自身の症状や子供の頃の様子を整理しておく
専門医療機関を受診する際は、事前に情報を整理しておくと診察が円滑に進みます。
現在、仕事や生活の中で具体的にどのようなことで困っているのか、その状況や頻度をメモに書き出しておくと良いでしょう。
例えば、「週に3回は約束を忘れる」「資料作成でケアレスミスが多い」など、具体的なエピソードをまとめておきます。
また、大人のADHDの診断では、子供の頃の様子も重要な情報となるため、可能であれば親や兄弟に当時の様子を聞いたり、小学校の通知表などを確認したりしておくことも役立ちます。
日常生活の困難を減らすための工夫を取り入れる
専門家への相談と並行して、日々の生活の中で困りごとを減らす工夫を取り入れることも有効です。
例えば、忘れ物が多い場合は、スマートフォンのリマインダー機能を活用したり、玄関のドアに持ち物リストを貼ったりする方法があります。
タスク管理が苦手な場合は、やるべきことをToDoリストとして書き出し、優先順位をつけて一つずつこなしていく習慣をつけると良いでしょう。
衝動的な買い物を防ぐために、高額な商品を買う前には一日時間をおく、といった自分なりのルール作りも効果的です。
ADHDに関するよくある質問

ADHDのセルフチェックや診断に関しては多くの方がさまざまな疑問を抱えています。
ここではセルフチェックの結果をどう捉えればよいのか、実際に医療機関を受診する際にはどうすればよいのかなどよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
専門的な診断を受ける前に抱きがちな不安や疑問を解消するために参考にしてください。
ADHDのセルフチェックだけで自己判断できますか?
できません。セルフチェックはあくまでADHDの可能性を探るための簡易的なツールです。
確定診断には、専門医による詳細な問診や心理検査などが必要です。
チェックリストで傾向が見られた場合は、自己判断で結論づけず、専門の医療機関へ相談してください。
大人がADHDの診断を受けるには何科を受診すればよいですか?
精神科や心療内科が専門となります。
特に「大人の発達障害」を専門に診ているクリニックや病院を受診するのが最も適切です。
医療機関のウェブサイトなどで診療内容を確認し、事前に電話で問い合わせてから予約するとスムーズに進みます。
チェックリストの結果は診察時に持参すべきですか?
持参することを推奨します。
記入したチェックリストは、医師に自身の症状や困りごとを具体的かつ客観的に伝えるための良い資料となります。
これにより、問診がスムーズに進み、より的確な診断につながる可能性があります。
まとめ

ADHDは、不注意、多動性、衝動性を主な特徴とする発達障害であり、その特性は大人になってから社会生活の中で問題として顕在化することがあります。
この記事で紹介したセルフチェックリストは、自身の特性に気づき、ADHDの可能性を客観的に把握するための一つの指標です。
もしチェックリストでADHDの傾向が示唆されたなら、それは専門の医療機関へ相談するきっかけと捉えることができます。
診断を通じて自身の困りごとの原因を理解し、具体的な対策や支援について考えることが可能になります。






