発達障害と虚言って関係ある?
発達障害を持つ人は平気で嘘をついてしまうことがあります。
誤解されがちですが、この虚言には悪意はありません。
衝動的な虚言には、複数の心理的・発達的特性が関わっています。ADHD(注意欠如衝動性障害)や様々な発達障害の人は、自分の言動や感情を適切にコントロールすることが難しく、衝動的に事実と異なる発言をしてしまったり、作り話を話してしまったり、その場をやり過ごすための虚言を用いたりすることがあります。
適切な表現方法を学ぶことで、誤解を招くような「嘘」を減らしていくことができます。大切なのは、誤った表現をしたときに、その話を否定せずにまずは受け入れる姿勢を示し、その後で適切な表現方法を教えることです。
発達障害と虚言に理解を
発達障害を持つ人が虚言を使う場合、その行動背景にある感情や状況を理解し、適切な支援を行うことが重要です。事実と異なる発言に対しては、直接否定するのではなく、理解と受容の姿勢を示し、共に真実を探求することが勧められます。また、感情のコントロールが難しいために虚言に頼ることもあるため、そのような状況下でのサポートをする必要があります。
こんなにいろいろある!虚言タイプ
虚言には嘘の状況や内容によって、以下のような障害の可能性が考えられます。
演技性パーソナリティ障害(HPD)
自分をより良く人に見せたいという思いから虚言をすることがあります。ありえない妄想を事実のように語ったり、話を誇張したり、有名な社長や芸能人と友だちであるかのように振る舞ったり。また、周りの人からの注目や承認欲求を極度に求める行動を示します。
衝動や感情の浮き沈みが激しいという、ADHD(注意欠如衝動性障害)の特性を二次障害で発症するケースも指摘されています。
頭も良く、将来は権力志向になりやすいですが、大抵の場合は周囲との利害調整が出来ず、虚言がバレて、孤立したり、社会的制裁を受けたり、詐欺などの犯罪行為を起こすこともあります。
反社会性パーソナリティ障害(ASPD)
自分や周りの人がどうなるかを考えることなく発言・行動したり、また良心の呵責(かしゃく)や罪悪感を覚えることなく、自分の欲望を追い求めます。 反社会性パーソナリティ障害の診断は、結果や他者の権利の軽視、自分が願望を手に入れるために虚言したり、操作したりすることなどの症状に基づいて下されます。
また、よくテレビや映画で目にする「サイコパス」とは反社会性パーソナリティ障害に分類され、感情 ・良心 ・罪悪感の欠如が認められ、冷酷でエ ゴイズムであるという特徴が示されています。 ただし、中には口が達者で表面的には魅力的なサイコパスもいるとされます。
妄想性パーソナリティ障害(PPD)
妄想性パーソナリティ障害は、猜疑(さいぎ)性パーソナリティ障害とも呼ばれ、根拠のないことを自身に本当に起こったことだと信じ込んでしまうことから結果的に嘘をついてしまう障害です。例えば、周りの人が自分を搾取仕様としている、欺こうとしている、危害を加えようとしていると計画しているのではないかと疑っているため、侮辱、軽蔑、脅しがないか何かされるんじゃないかと、常に警戒しています。
他人に対する強い不信感や疑念を特徴とする障害であり、これが日常生活や対人関係に深刻な影響を与えることがあります。ほとんど証拠がない場合でも強く主張し続けます。
虚偽性障害/作為症
「ミュンヒハウゼン症候群」という言い方の方が知っている人も多いのではないでしょうか。自分自身の身体的、心理的不調を意図的に装うことで知られる精神疾患です。この疾患は、利益を目的としない虚偽の報告や自ら症状を作り出す行動が特徴で、詐病や境界性パーソナリティ障害など他の精神疾患との鑑別が必要です。
詐病との違いは、詐病が利益を求めて虚偽を報告するのに対し、虚偽性障害/作為症は外的報酬を目的としないことが大きな違いです。
類似している疾患のひとつとして、「代理ミュンヒハウゼン症候群」が知られています。
この疾患は、主に養育者が子どもを病気に偽装して必要ない検査や治療を繰り返して行うという特徴があります。
明らかな外的報酬がないにもかかわらず、自分自身ではなく他人に対して障害を与える精神疾患です。
発達障害で虚言の人には共通の性格がある?
発達障害を持つ人は、特定の状況で、事実を誤って伝えることがあります。悪意はなく、その特性に基づくものです。例えば、アスペルガー症候群は、本音と建前を使い分けることが苦手で、正直すぎることがあります。このように、発達障害を持つ人の言動は、自分や他人への感情のコントロールが難しいため、思わず口にしてしまうことがあるのです。
人に気持ちが汲み取れない
自分の行動によって周りがどう思うかを考えられない、他人の感情や空気を読むことが苦手。これは、日常生活や社会生活においても大きな課題となります。
事前に自分の特性を打ち明けたり、相談しやすい環境づくりが大切です。
頑固・意地っ張り
周りの意見を全く聞き入れようとしない事が多く、自分の考えを曲げることが出来ない。周囲から孤立しがち。単なる個性ではなく、深い心理的な背景があります。特に発達障害の人は、感情と行動のコントロールの難しさ、自身の過去の傷つき体験が自尊心の低下に繋がったなどがあります。
目立ちたがり
これは、主に演技性パーソナリティ障害の人の特徴でもありますが、自分に注目が集まらないと、話を盛って話したり、あからさまに不機嫌になったりと、周りにいる人もハラハラしてしまいます。
「悲劇のヒロイン症候群」と呼ばれることもあり、自分に注目してもらうために、自分の置かれている状況を悲観的に語ったり、嘘の上にさらに嘘を重ねることも多いです。
最終的に嘘だらけになり、自分が言ったことが分からなくなって、対人関係に亀裂が入ることもあるでしょう。
自己中
ADHD(注意欠如衝動性障害)や自閉症スペクトラム(ASD)の人によくある特徴で、独特な脳の働きや心の状態に起因することが多いです。
なんでも自分優先で会話が進む、他のことを考えてしまって人の話を聞いていないなど、自己中心的な人間だと誤解されることが多いです。過集中状態など、ひとつのことに没頭している時も、周りが見えなくなったり、呼ばれているのに気付かないなど、頼まれていたことより自分がしたいことを優先するなど、これも自己中心的と捉えられる原因となります。
損得勘定
これは、主に自閉症スペクトラム(ASD)や自己愛性人格障害(NPD)の人の特徴で、一般的な社会生活で人間関係を利益と損失の観点から自分勝手に自己評価することを意味します。自分の行動や決断を他人の感情よりも自分が下した損得勘定に基づいて行うことが多く、この行動が「心がない」「打算的だ」と誤解されることがありますが、実際には自分なりの感情や心を持っています。
基本的には、自分のメリットを優先し、すべての物事を損得で考える傾向にあります。また、計算高く、利己的な行動を取りがちです。序列意識に敏感で、上には媚びを売り、下は見下します。利用価値のある人を利用して自分の利益を取る傾向があり、深い人間関係を築くことが難しい場合があります 。同じく損得勘定な人ばかり集まって来て、真の友だちも減っていくなんてこともあるでしょう。結局、周りにも損得され誰もいなくなったなんてことになる前に気付くことが大切です。
プライドが高い
プライドが高く自分の非を認めない、謝れないタイプの人が多いとも言えます。「理想が高い」「現実を見ていない」と誤解されることがあります。特に、言語理解が優れているが処理速度が遅い人は、抽象思考の早熟さと実行機能やコミュニケーション能力の晩熟さのギャップが原因となり、このような誤解を受けやすいです。自分の行いで招いた明らかに不利な状態でも、訂正する言葉や謝罪の言葉など、気持ちを言葉にする言語化能力が乏しく、苦しい状態になることもあります。自分でもわからないうちにストレスを溜めてしまい、「何に困っているか」「どんなことが心配か」など、頭の中だけで考えず、誰かに話す勇気や時系列でノートに書いたりして、整理することがおすすめです。
まとめ
発達障害を持つ人に関する誤解や思い込みを解消するべく、それぞれの特性や心理状態への理解を深める必要があります。日本ではまだまだ分からないことだらけの発達障害への世間の間違った考えは、発達障害がある人たちの真の能力や価値を見過ごす原因になりかねません。
誰しも持ち合わせている可能性や適正を見抜き、適材適所でそれぞれの特性に基づいた適切なサポート体制のもとで、すべての人々が社会に貢献できるような環境を整えることが大切です。
よくある質問
- Q.発達障害を持つ人はなぜ嘘をつくことがあるのですか?
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発達障害を持つ人が嘘をつくのは、感情のコントロールや自己表現が難しいためです。嘘は悪意からではなく、ストレス回避やその場をやり過ごすために使われることが多いです。
- Q.虚言が見られる発達障害の種類にはどのようなものがありますか?
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虚言が見られる発達障害には、演技性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害、妄想性パーソナリティ障害、虚偽性障害などがあります。
- Q.発達障害の人が虚言を減らすためにはどのようなサポートが必要ですか?
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発達障害の人が虚言を減らすためには、適切な表現方法を学び、誤った表現を否定せずに受け入れ、その後適切な表現を教えるサポートが必要です。