この記事は、発達障害(LD)を持つ人が勉強に苦労する理由と、その対処法に焦点を当てています。
LDには、読字障害(ディスレクシア)、書字表出障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)など、さまざまなタイプがあります。知能には問題がないのに、読み書き計算が出来ないと思ったら、専門家に相談しましょう。
適切な学習法の選択、サポートツールの活用、そして、特性を受け止めることの重要性について書いていきます。これらのアプローチは、発達障害を持つ人が学習の壁を乗り越え、ポジティブな教育経験を築くために必要なことです。
LD(学習障害)/SLD(限局性学習症)とは
LDとは「Learning Disabilities(学習障害)」の略ですが、
「Learning Differences(学び方のちがい)」や「Leaning Diversity(学び方の多様性)」という、別の定義も考えられています。名称は、LD(学習障害)が長年使われていましたが、近年はSLD(限局性学習障害症)とも呼ばれています。
LD/SLDの苦手なもの
読むのが苦手(ディスレクシア)
ゆっくり時間をかけて書いてある文字を理解します。
ひらがな・カタカナ・漢字それぞれ読みづらく、特に英語は混乱してしまうでしょう。
読めないものは飛ばしてしまったりして、結局何が書いてあるか理解出来ていない事があります。
書くのが苦手(ディスグラフィア)
ゆっくり丁寧に書いても、どこか歪になってしまいます。書き間違いも多く、文法も人とは違ったものになりがちです。
英語のスペルを覚えることも困難で、漢字も書き順など覚えられないでしょう。
計算が苦手(ディスカリキュリア)
数字の大小を理解するのが難しく、暗算や筆算にも時間がかかります。推論が苦手で、分数や因数分解など、高度な概念の理解が出来ません。
LD/SLDは世界でどのくらいいる?
カナダではLD/SLDが急増!?
カナダ統計局によると、
カナダでは、50万人以上の成人がLD/SLDによる問題を抱えて暮らしており、大学や仕事での学習がより大変なものとなっています。
2001年から2006年の間には、15歳以上のカナダ人の中でLD/SLDは急増し、その数は約40%増え、全体で63万1,000人となりました。
LD/SLDは、加齢に関係なく最も急速に増加している発達障害のひとつになっています。
日本でのLD/SLDの有病率は?
日本の調査では、学齢期の子どもにおいて5%から15%程度の有病率と言われ、 成人における有病率は約4%とされています。
日本人の15人に1人くらいは、LD/SLDの疑いがあると言われています。
LD/SLDの脳のメカニズム
知的発達に問題がない、先天的な脳の特定の機能の障害が原因とされています。
読字障害には、文字と発音を結びつける脳の機能に影響が出て、読み方や発音に支障が出てしまいます。
書字表出障害は、どのように書くか分からず脳の機能が戸惑い、上手く指示が出せない状態です。
算数障害は、主に「ワーキングメモリ」の制限、数の理解、空間認知の問題、および言語理解が原因です。情報の一時的な保持や、長期記憶や暗記からの情報の迅速な取り出しに影響を及ぼし、これが四則計算や文章題解決における困難につながります。
学校教育が始まる、5歳から6歳までの就学期に診断されることがほとんどですが、就学前の段階で、言語の遅れや数を数えること、お絵描きやブロック遊びに必要である手先を使った動作がたどたどしいなど、LD/SLDの特性の兆候に気づかれることもあります。
LD/SLDの特性で悩むことがあったら
個々のニーズに合った学習方法を追求しよう
読字障害へのアプローチ方法
ものさしや下敷き、厚紙シートを使用して、読む場所の飛ばし読みを防ぎ、文字のまとまりを意識させる方法が役立ちます。絵本や挿絵が多いものを利用することで、絵から内容を推測しやすくし、本人が読みやすいフォントを探すのも有効だと思います。
書字表出障害へのアプローチ方法
まずは、簡単なひらがなから始めましょう。薄く見本が書かれた文字をなぞる練習や、大きめのマス目や十字の補助線入りのノートを使用したり、大きめに書いて練習するなど、文字の形を覚えやすくしましょう。
算数障害へのアプローチ方法
まず、数字や数に慣れさせることから始めましょう。
身近な学習法は、「アナログ時計」です。時計には数字が書いてあり、読み解いて時間を判断します。どこかに出かけた際、町中ので計を見つけたら、「今何時?」と問題を出してみたり、数字が嫌いにならない程度に楽しく勉強することが大切です。
自分の特性を認め、自己紹介できるようになる
LD/SLDの人の情報処理能力は、一般人にとってとても理解しにくい能力です。
「なんでそんなことも出来ないの?」と言われたりして、あらぬ誤解が生まれることもあるでしょう。周りの人たちに、自身の特性を説明し、理解とサポートを得ましょう。
苦手な分野ではなく、得意なことで自身の才能を発揮しましょう。
苦手な問題には、周りに音読してもらったり、イラストで伝えてもらうなど自分なりの対策を考えましょう。
リラックスな環境づくり
LD/SLDは、読み書きにゆっくり取り組み、計算にも時間がかかってしまいます。
目まぐるしい職場や、時間制限がある作業などは気が散って何も出来なくなってしまいます。
ヘッドホンで音を遮断したり、計算機を使うなど、働く場所も自宅作業に変えるなど、苦手克服のために行動することはとても大事です。
ですが、自分の好きなことや興味のあることを思いっきり楽しむ時間も大切にしましょう。
相談できる場所はたくさんある
親や兄弟など身近な人に相談出来ない場合は、学校のスクールカウンセラーや働いている会社の相談窓口や、お住まいの近くの都道府県や自治体が運営している相談窓口など、LD/SLDを相談できるところは、全国各地にたくさんあります。
自分に合った相談機関で、信頼できる専門家やカウンセラーを探すのもひとつの手です。
まとめ
LD/SLDにとって、
「読むだけ」
「書くだけ」
「計算するだけ」
ただそれだけの簡単なことも、人より時間がかかってしまいます。
学校生活での勉強だけではなく、社会生活でも多大な影響があります。
会社へ行きたいのに、何駅かわからない、何時か見ていたら電車が行ってしまった、など大人になっても苦い思いをするかもしれません。
苦手な分野に囚われなくてもいいと自覚してください。
「自己開発スキルを伸ばす」
これは発達障害があろうがなかろうが関わらず、皆がすべきことです。。
周りの意見も取り入れ、柔軟な姿勢で本来持っているスキルの向上に努めましょう。
よくある質問
- Q.LD(学習障害)とは何ですか?
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LD(学習障害)は、読字障害(ディスレクシア)、書字表出障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)など、特定の学習分野に困難を抱える障害のことを指します。知的能力には問題がありません。
- Q.日本におけるLD/SLDの有病率はどのくらいですか?
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日本では、学齢期の子どもにおけるLD/SLDの有病率は5%から15%程度で、成人では約4%とされています。
- Q.LD/SLDの特性を持つ人が学習の壁を乗り越えるためにはどうすれば良いですか?
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個々の特性に合った学習方法やサポートツールを活用することが重要です。例えば、読む際には下敷きを使用し、書く際には大きめの文字で練習することなどが効果的です。専門家の支援も受けましょう。